2021.03.08
ハイブリッドMICEの「体験価値」について対談!渋谷MICE協会セミナーでJCSが登壇
2月18日(木)、一般社団法人 渋谷MICE協会が主催する、ニューノーマル時代のMICEを深掘りするための「勉強会」が開催され、JCSの国際会議部 部長の中村がゲスト講師として登壇しました。コロナ禍における渋谷区エリアの産業・交流経済をより発展させるため、各種MICEをプロデュースしているPCOの当社に声をかけてくださいました。
当社の中村は、緊急事態宣言が初めて発令された2020年4月を起点に、MICE業界で発生したトレンドの変化や、主催者・参加者のニーズの移り変わりなど、昨今の主流になり得る「MICEの新しい形態」を取り入れた話をしました。講演後は、CIC Japan 会長 梅澤高明氏と対談を行い、「ハイブリッドMICE」の体験価値について追求しました。
本記事では梅澤様との対談内容を掲載しています。
セミナー登壇をオファーしてくれた人
CIC Japan 会長 /
A.T.カーニー日本法人 会長
梅澤 高明 様
観光庁「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」座長
一社「ナイトタイムエコノミー推進協議会」理事
日米で25年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。クールジャパン、知財・デザイン、インバウンド観光、税制などのテーマで政府委員会の委員を務める。
期待値が高まる「ハイブリッドMICE」
を題材にインタビュー・対談
梅澤様 Withコロナの影響でMICEの需要が一時急減し、ハイブリッドMICEが次々起こることは皆さん予測できていて、実際その通りだと思います。ハイブリッドMICEってどういう風にやると上手くいくのか、どういう価値に再定義されていくのか、それに対して「正しい方向性」を示すことができる人に今まで出会えていなかったです。
そんな中、2020年11月30日に開催された観光庁主催セミナー「With/Postコロナ時代のMICEを考える -調査事業中間報告:国際会議を中心に-」に参加したところ、そこで登壇していた中村さんとのご縁が出てきて。これで渋谷MICE協会の皆さんに「示唆」を共有できるぞ、と率直に思いました。それこそ日本全体でMICEをどう誘致するかという戦略が走っているのと同時に、実はIRの錦の御旗もMICEだったわけじゃないですか。だからこそインパクトが大きいし、これからのMICEがどうなっていくのか?という点は、今後のIRを日本がどう創っていくのか、という点にも繋がってくるかと。観光戦略全体を大きく左右するスケールにもなりますが、まだ誰も答えを見出せていない現状を、どうにかしたかった。
中村の講演を踏まえ、見えてきた
「キーワード」
梅澤様 今後のMICEの形態がハイブリッドに定着していくことに加え、リアルの場に集まることの価値をより先鋭化すべきなのだと、改めて認識することができました。中村さんが講演で話していた「ネットワーキング」、「bumping」、それから「アフターMICE」も含め、すべてがエクスペリエンス(体験の価値)ですと。日本のMICE業界は、それらを先鋭化することを第一優先にできていなかったかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか。
中村 今はまだそこまでのレベルに至っていなくて、過去の「リアル開催」に戻すことを前提に考えているように思います。しかし、別の選択肢が出てくることで、従来型のMICEを開催するこちら側に魅力が足りないと、他所に流れてしまうよね、という課題にぶつかります。つまり、「リアルの深掘り」をしないといけないし、「オンラインの横展開」もしないといけない、両方必要ですね。
梅澤様 そうですよね。ハイブリッドの場合、世界中の方にオンラインでストレスなく「質の高い体験」を提供でき、さらにその体験がある程度「質が担保されている」となれば、わざわざ現場にいく理由ってなんだっけ?という動機と根拠が求められる。なので、そこにより深い価値を提供できるようにならないと、ハイブリッドMICEで競争力のある拠点になっていかないということが、今日極めてクリアになりました。
ハイブリッドMICEに期待できる
「ビジネス」の可能性
梅澤様 ハイブリッドMICEは、間違いなく増えると思います。ハイブリッドで開催したイベントにオンラインで参加できるという選択肢は、ある意味距離を超えて提供できることになる。情報伝達の視点では、今まで以上にハードルが下がり、多くの人が「より質の高い情報」にアクセスできるようになる。そんな中、MICE業界(PCO)にイノベーションを起こしてほしいと思うのは、やはり「リアルの場の価値」をどういう風に高めていくのか、というところですね。
2020年10月に開設したここ(CIC)も、言って見れば極めて小さなMICEの拠点と言えます。50人から200人ぐらいの規模であれば、Venture Café(教室型のセミナースペース)をメインホールとして活用しています。ハイブリッドの時は、今回のウェビナーで使用したスタジオを使ったり、あるいは両方のスペースを利用したりしています。
私たちは、姉妹組織のVenture Caféで、昨年2月からオンラインイベントを毎週やってきたので、たくさんの人に何かを届けるという手法は経験済みです。しかし、オンラインの中で「Bumping」を起こすのは、私たちも苦労していて、未だに「最適解」が見えていなくて。現地までお客さんに来てもらうと、そこらかしこでセレンディピティ(幸運な偶然と接触できる機会)が起こるんですよ。コロナ禍でリアルイベントに行くハードルが高くなる中、リアルな体験に対しての「期待値」は上がっていると実感しています。そして、「中途半端なリアルな体験だったら、もうオンラインでいいや」と認識される時代に、少しずつシフトしているようにも思います。リアルの体験価値は、いままでのクオリティじゃダメなんだと。リアルと向き合っている事業者は、まさに今、“チャレンジに直面している時代”という気がしています。
つまり、「より高い価値のリアル」を提供できれば、今までよりも高額なプライシングが成立するし、むしろ高いプライシングにすべきと思います。これまで1,000人を集めて実現できたイベントを、リアルは100人で、残り900人は配信で、といった具合に、そこに大きな「価格差」をつけることができます。
当社のような「PCO」と連携して
取り組んでみたいこと
梅澤様 私たちは、中小規模のイベントは自分たちで運営してまして、2020年10月から2021年1月に至るまで計60回くらい、ここの会場(CIC)を使って開催しています。オンラインで2,000人くらい集まる規模も2回程ありました。なので、例えば「運営の高度化」等をアドバイスしてもらえると、できることが広がる気がします。コロナの再流行で、今はイベントのハイブリッド化を試行錯誤している状況です。今後はプロ(PCO)に、私たちのイベントを診断していただく機会を検討すべきか考えています。
中村 私は、今回の演題テーマのエリアマネジメント(渋谷区の産業・交流経済の発展に向けたMICEの取り組み)は、大変興味がありました。MICEの主催者って毎回「人」が変わるため、中長期的に成長させていきましょう!という発想が少なかったりします。当社には地方創生に取り組んでいる部署もあるのですが、そこに根を下ろして「一緒にDMOもやっていく」といった活動は、私の中でもまだ経験が多くないため、そういった領域でも一緒にコラボレーションできると面白いなと思いました。
梅澤様 DMOの視点だと、MICEを1つの「キーコンテンツ」としてやっていけそうですよね。
中村 はい、そこに我々が、これまでの知見を活かして何かしらのコンテンツを一緒に開発・展開できればと。
梅澤様 都内は主要なエリアがいくつもありますが、たまにそういったお話(DMO×MICE)があります。そこで、我々がよく遭遇するのが、アフターMICEの「夜間観光」や「文化観光」なのですが、そのような機会があった際には、ぜひ。
サステナビリティの可視化、事業との融合
梅澤様 これからSDGsが「必須条件」になっていくことは間違いないですよね。MICEに関わるステークホルダーの方々は、世の中的にいうと意識の高い人が多いと思いますし、会場に足を運んでいただく人数を絞れば絞るほど「富裕層」になるわけで。富裕層の視点から見ると、SDGsって本当に当たり前の世界になりますので、これは避けて通れない。この話が日本であまり刺さらないとするならば、日本の事業者の意識を変えていかないと、まずいですよね。ここまでは私もアグリーなんです。それをどう測ったらいいか、どう推進すべきかが、課題でもあり重要だなと。
中村 私たちはSDGsと向き合う時、クライアントの役に立てないと意味がないと思っています。理念やブランディングの領域では、相手からのニーズがあった場合、お手伝いできる範囲では今でも出来ていると思います。しかし、弊社が提供しているサービスに着目して「サステナビリティの取り組み、その精度をさらに高めていく」という次元に持っていくには、まだ模索している最中です。あるいは、それを他社との差別化要因にしていくべきか、など。
梅澤様 差別化になるかっていうと、ちょっと疑問ですね。
中村 逆にいうと、平坦な世界になっていきますよね。当たり前のことですよ、という風に。
梅澤様 はい、それができていないと支持を失っていく気がします。その先にあるカンファレンスのテーマを議論する際、具体的なSDGsのトップラインに繋がっていく話が出てくれば、それは差別化になるとも思うんです。カンファレンス全体がサステナビリティをちゃんとやっている!という状態が「差別化」のポイントになるのは、せいぜい2年くらいの間だけではないかと。
中村 MICEを誘致する際も、街や施設がどれだけSDGsに対応しているか、我々のようなイベント会社(PCO)がどれだけSDGsに取り組めているか、という要件が求められたりします。ケイパビリティの1つとして、梅澤さんがおっしゃる通り、やっていないとそのステージにすら上がれない、という状態になっていきますよね。
梅澤様 そうですね、格の高い人たちを呼ぶっていう時は、特に。
中村 私はMICEのプレイングマネジャーとして、主催者や参加者の声を聞きながら活動していますので、こういったセミナーや対談の機会に“生のエピソード”を提供できるのが、自分たち(PCO)の強みだと思っています。
梅澤様 どんどん(講演を)お願いしそうです。
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