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2024.03.29

【開催レポート】第1回 フリーランス通訳者情報交換会 ~キャリア形成と家庭の両立~


JCSは、登録通訳者の皆様が長期にわたり安心してご活躍いただけるよう継続的な支援を行っております。その一環として、「フリーランス通訳者情報交換会」を開催し、通訳者同士の経験や知識の共有を促進する場を提供しています。第1回目となる今回は「キャリア形成と家庭の両立」をテーマに掲げ、2月17日に当社会議室にて開催いたしました。第1部では、子育てをしながら長く通訳のお仕事を続けられてきた大坪薫様と鈴木康子様のお2人をゲストスピーカーとしてお招きし座談会を開催。第2部ではゲストのお2人や JCS 担当者も加わり、交流会を行いました。今回は、少人数で和気あいあいとお話しいただけるよう定員を設け、6名の参加者にお集まりいただきました。

今回のゲストスピーカー

大坪薫氏
上智大学外国語学部フランス語学科卒業。フリーランス通訳歴40年。
G7やアジアの未来等の閣僚級国際会議の通訳を務める。IT、金融、政治経済、環境など幅広い分野で活躍中。

鈴木康子氏
立教大学文学部英米文学科卒業。
化粧品メーカーでの国際広報を経て、フリーランス通訳へ転身。現在は IT、金融、法律をはじめ、政治経済、経営、環境等、常に新しい分野に挑戦し、活躍の幅を広げている。

キャリア形成と家庭の両立

第1部の座談会は、事前に集めた質問に大坪様、鈴木様からコメントをいただきました。以下いくつかご紹介いたします。

家庭と仕事、両立していて大変な時期はどんな時ですか?

大坪様:子どもが病気やケガをした時は大変でした。小さいときは病気になりやすく、大きくなってからはケガが増えました。

鈴木様:保育園入園後、 4,5 歳までは病気になることが多かったです。周りに頼れる人がおらず、深夜に病児保育やシッターを予約することが大変でした。看病をしていると寝られず、仕事の準備もできず、最後には自分もかかってしまう、なんてこともありました。たまたま家の近所に病児保育があったので、とても助けられました。

分野に注力することのメリットはありますか?

大坪様:興味を持っている分野に注力することは良いことだと思います。その興味は時代によって変わってももちろん大丈夫。私も若いころは歯科や医薬の案件も声をかけられていましたが、出来ないので断るようになりました。その後、政治経済や IT 分野を中心に対応していましたが、今の流行りは環境分野ですね。IT は何の分野でも絡んでくるので、対応しておいてよかったなと思います。

鈴木様:医学は、医学だけを専門とされている方もいらっしゃると聞きますが、他の分野は、分野が重なっているところがありますよね。例えば、最近は金融分野も環境が絡んだお話がでてきます。ただ、一番大事なことは自分の好きな分野をやることです。私は医学以外の分野は全部対応しています。その時代の流行に合わせて、新しい分野に楽しんで挑戦しています。

子育て中も、新しい分野への挑戦やスキルアップは心がけていましたか?

大坪様:今のほうが新しい分野は避けているかもしれません(笑)。その代わり、若い頃はずっとチャレンジしていました。家事と準備で3時間睡眠だったこともありました。自分がやりたいのであれば、後悔しないために、睡眠時間を削ってでもやるべきだと思います。子どもを理由にしないことが大事ですね。

鈴木様:子どもが受験の時は慣れた仕事を多めにするようにしはしていました。ただ、昔と比べて通訳の仕事の仕方が多様化しているので、今なら違ったかもしれません。ここにいる皆さんは通訳が好きで通訳者になっているはずなので、自分の好きなようにすることが1番だと思います!

育休中のブランクによって、クライアントやエージェントと疎遠になってしまい、復帰する際に仕事がなくなってしまわないでしょうか?

大坪様:それはなかったです。今でも夏休みは2か月とっています。その代わりエージェントとはしっかりコミュニケーションをとることが大事ですね。

JCS:私たちエージェントといたしましても、皆様のお休み期間は決してマイナスなことと捉えておりません。復帰される際には、事前に時間制限や対応可能条件などをヒアリングしたうえで、ご希望に沿ったお仕事をご紹介させていただきますので、どうぞご安心くださいませ。

家庭と仕事の両立において大切なことは

お2人とも共通して、家庭と仕事がどっちつかずにならないよう、時間も気持ちも切り分けて対応されることが大切であるとおっしゃっていました。通訳という仕事が好きだから後悔しないように挑戦されてきたとのことです。また、家族がいる間は仕事を持ち込まないように、朝5時に起きて準備や勉強の時間を捻出する、子どものいない時間に新聞やニュース、 海外ドラマでスキルアップをする、など実践的なアプローチも教えてくださいました。​

参加者の声

  • 子供がいないので環境は違いますが、それでも仕事をセーブしなければならない状況に多々直面するので、大変参考になりました。一流の日英同時通訳者さんに直接お話を伺えて、背中を押してもらった気分です。

    先輩方、参加者の方々の様々なお話を伺うことができる大変貴重な機会でした。子育てに追われこの先キャリアを積んでいけるのかなど、いつも片隅に不安が伴う日々でしたが、時間の使い方を工夫し、試行錯誤を繰り返していけばいいのだと、とても前向きになれました。さっそく、翌日から時間の切り分けを実践しています。

    交流会では座談会のテーマを越えて、「通訳」という職業を考える機会にもなり、非常に有意義なひと時でした。

終わりに

今回は対応言語が異なる通訳者様、ご家庭の事情も異なる方にお集まりいただきました。最初は緊張された面持ちの方が多かったですが、最後には皆様とても明るいお顔で帰られた ことが大変印象的でした。このような機会は今後も設け、JCS としてフリーランス通訳者の方々のキャリアアップの一助となれるよう、尽力してまいります。

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