2021.07.06
質の高い字幕翻訳を作るコツとは?基本ルールや技法も紹介!
グローバル化が進むなか、イベントやセミナー、商品などのPR動画を、国内だけでなく、海外の視聴者向けに制作する企業が増えてきています。同様に、海外で制作された映像コンテンツを国内向けに加工する事例も増加しています。このような場面で必要となるのが「字幕翻訳」です。
イベントやセミナーの開催形式はコロナ禍で大きく変わり、オンライン型、ハイブリット型など、これまでとは異なる形式での開催が著しく増加しています。これに起因し、字幕翻訳のニーズは急速に高まっています。
一方で、字幕翻訳の方法について体系的にまとめられた資料や書籍は多くありません。映像というコンテンツの特徴から、字幕翻訳のノウハウが文字化されてこなかったからだと言われています。
本記事では、字幕翻訳の定義や基本ルールなどの基礎的な知識に留まらず、プロが実践している字幕翻訳の技法といったコツまで紹介します。
字幕翻訳とは?
字幕翻訳は、映像翻訳の手法の1つで、英語や中国語などの原音を映像に残したまま、画面上に訳文を表示させる手法と定義されています。
映像翻訳にはこのほか2つの手法があります。一つは吹き替えのリップシンク、もう一つはボイスオーバーです。リップシンクは、原音を完全に消して、あたかも画面に映っている人物が翻訳された言語で話しているように施す手法です。ボイスオーバーは、ドキュメンタリー番組などでよく使用されている、原音をかすかに残して翻訳された音声を被せていく手法です。
日本における字幕翻訳の歴史は約90年前にさかのぼります。日本で初めて日本語字幕がついた映画は、1930年に米国で制作された『モロッコ』で、日本公開は翌年の31年。翻訳者は田村幸彦さんという方です。
田村さんは米国を行き来して翻訳技術を学び、字幕づくりの基本的なルールを作りました。1秒3、4文字、縦字幕で1行13文字(現在は10文字)、最大2行とされる田村さんの制作のルールは、今も映像制作における字幕翻訳の基本ルールとして根付いています。
その後日本人の本物志向や、日本の識字率の高さも相まって、字幕翻訳は日本に定着し、映画はもちろん、TV番組など日常生活で無くてはならないものとなっています。字幕を読む側だけでなく、提供する側から見ても、字幕翻訳は、文字数や時間に制限がある一方で、表現の自由度が高いことから支持されています。
字幕翻訳のルール
続いて、字幕翻訳のルールについて説明します。映像を制作する段階から、字幕翻訳のルールを意識しておくことが大切です。視聴者が内容理解を深める手立てにもなります。
時間や文字数を制限する
字幕翻訳のルールの一つに、時間や文字数の制限があります。
時間の制限は、1秒当たりの文字数を4文字とする制約のことです。例えば、「What are you doing?」というセリフが1秒だとすると、日本語4文字で意味を考える必要があります。欧文の場合は、1秒当たりの文字数は12文字が標準とされています。
次に文字数の制限について説明します。1行あたりに挿入する文字数のことを「行幅」と言います。 1行当たりの文字数は最大13文字とされていますが、制作側の都合により3文字程度増減する場合があります。
字幕1画面の秒数や行数を制限する
字幕1画面当たりの秒数や行数にも制約があります。1画面の字幕に表示するのは2行まで、表示時間は最大6.5秒までとされています。
また、字幕翻訳では「句読点を使わない」というルールも存在します。読点は半角空け、句点は全角空けで表します。
補足を加える
字幕を翻訳する場合、原文の直訳では、意味が伝わらないというケースが少なくありません。そこで、字幕翻訳者は原文の意図を正確に伝えるために、必要最小限の補足を追加する必要があります。
補足で付け加える内容は、英語圏では言わずともわかる背景知識、英語だと文脈が読み取れるが日本語だとわかりにくいニュアンス、などが挙げられます。
言葉を言い換える
補足のほかに、状況に応じて言葉の言い換えが必要な場合があります。言い換えは、同じ意味を違う言葉を使って表現することです。直訳では文字数がオーバーする、意味が通じない、文字の削除や補足でも、適切な表現ができない場合などには、あえて別の表現にすることがあります。
質の高い字幕翻訳を作るコツ
基本ルールを説明してきましたが、字幕翻訳のルールを踏襲するだけでは、視聴者を満足させるコンテンツを提供できません。クオリティの高いコンテンツを作るために、翻訳のプロが実践しているコツをいくつか紹介します。
表現を簡潔にする
字幕翻訳では表現が簡潔であること、客観性が高いことが重要です。
例えば画面に女性や老人が映っている時は、語尾に「…よ」「…ね」「…じゃ」などの言葉を多用しないなど、シンプルな表現を心掛ける必要があります。
字幕翻訳の初心者は、性別など対象に応じて語尾を変えがちですが、単純に「です・ます」などで切る方が適切です。
非言語メッセージで補完する
書籍の翻訳と異なり映像のある字幕翻訳では、言語だけではなく、映像(視覚)や音(聴覚)からも内容を理解することができます。そこで翻訳の際に、非言語メッセージで補完するという手法を用いると、表現力に優れた字幕翻訳になります。
例えば、講演の質疑応答で、質問者を映しながら、講演者が「3列目に青い服を着て座っているあなた、質問をどうぞ」と言い当てる場面を想定してみましょう。これを非言語メッセージで補完する場合、「3列目に青い服を着て座っている」という説明は映像から明らかなため、伝えたい字幕の文言を大幅に省略して「あなた、質問をどうぞ」と言い換えることができます。
解像度の高いデータを使う
字幕翻訳そのものの技術と趣旨が若干それますが、動画や元データは、可能な限り、解像度の高いファイルを使うことが重要です。動画の使用目的や、動画コンテンツを放映する機器(タブレットやスマートフォン)によって、最適な解像度が変わってしまうからです。
YouTubeやウェブサイトを使う場合は、解像度が低くても問題はありません。しかし、動画コンテンツを放映するのが、大きなスクリーンを使う国際展覧会やセミナーといった大規模な会場では違います。
大きなスクリーンでは、高い解像度のファイルを使用しないと、動画を再生した場合に文字が粗くなりがちです。画面の視認性も落ちます。結果、内容が視聴者に伝わらないという事態の発生も考えられます。
以上のように、字幕翻訳にはさまざまなルールや技法があり、それらを実践してはじめて、視聴者に伝わりやすい動画コンテンツを創り出すことができます。
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JCSの字幕翻訳サービスと事例紹介
イベントやコンベンションの運営を手がけるJCS(日本コンベンションサービス)は、レベルの高い翻訳サービスを提供しています。翻訳の質とともに、サービスの裾野の広さに強みを持ち、登録翻訳者の言語の種類は、英語や中国語、韓国語など40言語以上、登録者数は1,000人以上に上ります。
サービス内容
JCSは、IT・テクノロジーや金融財務といった専門分野に強い翻訳サービスを40言語以上で提供しています。字幕翻訳は原文を直訳するだけでなく、前提知識を踏まえた上での翻訳が必要となるケースが多いですが、JCSはそうした需要者側のニーズに応えようと、幅広い対応言語と分野でサービスを展開しています。
サービスの中でも、JCSは品質レベルの追求に余念がありません。原稿に応じた翻訳者の選定はもちろん、字幕用のリライト作業も独自のチェック体制を構築し、レベルの高い翻訳に注力しています。
納品データについては、表示開始時間、終了時間、原文、字幕などの項目を一覧にしたエクセル英日対訳表から、字幕用データ、さらに字幕収録まで、ニーズに合わせて幅広く対応しています。
また、JCSではグループ内に映像を扱う企業があるので、字幕入れだけではなく、映像の撮影からコンテンツ制作まで一貫した対応が可能です。
さらに、JCSは翻訳業界でいち早くプライバシーマークを取得し、情報管理と機密保持を徹底しています。
実績・強み
JCSは、コンベンションや大型国際会議での翻訳経験を重ねており、幅広い分野で高品質なサービスを提供しています。
その中でもとりわけ強みを持つ分野は、IT、製薬の分野です。
IT分野では、製品紹介やデータ解析、データソリューションについてのプレゼンテーション、ディスカッション動画等に字幕翻訳を施しています。IT分野は専門知識が必要なため、対応できる訳者は通常に比べ限られますが、知識・経験のある翻訳者をアサインし、高品質のサービスを提供しています。
製薬分野で手がけるのは、社長メッセージ、研修動画、専門用語も出てくる製品紹介の動画など種類はさまざまで、専門性の高さや難易度に応じて、その素材に合う最適な方法をご提案し、翻訳を行っています。
上記以外にも幅広い分野や用途の実績を基に、要望や状況に合わせた対応を致します。お気軽にご相談ください。
映像翻訳の対応事例
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講演動画
(金融系協会)英語で行われた30分程度の金融に関する講演動画に、日本語の字幕翻訳を付けました。音声の文字起こしから、動画への焼き付け作業までを行いました。
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企業メッセージ動画
(化粧品会社)創業者様の想いや環境保全への取り組み等、企業紹介動画の英語化を行いました。字幕の表示タイミングを示すタイムコードと、英語字幕のテキストを提供しました。
字幕翻訳のご相談はJCSまで
本記事では、字幕翻訳の基本ルールのほか、技法など、翻訳をうまく実践するためのコツについて紹介しました。
字幕翻訳に求められる技術は高く、専門性の高い企業に委託することが、高品質の映像コンテンツを制作する上での鍵となります。
JCSは優れた翻訳サービスで、お客様に最適な字幕翻訳を提供することが可能です。字幕翻訳に関する相談は、ぜひJCSまでお問い合わせください。
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参考文献
- 日本映像翻訳アカデミー(桜井 徹二、藤田 奈緒、新楽 直樹)( 2018)『字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論』日本映像翻訳アカデミー株式会社
- 島田洋子(2009)「翻訳であって翻訳でない字幕翻訳」『聖学院大学総合研究所NewsLetter』Vol.19 No.3 (pp.2–3) 聖学院大学総合研究所
- 染谷泰正(2009)「字幕の基本ルール(添付資料3)」「字幕翻訳の方法論(添付資料4)」『日本通訳翻訳学会第10回大会 (2009)』