コラム

2022.04.11

AI時代でも通訳者は必要?今後の役割や、通訳業界の最新状況と通訳者の活用方法を解説


技術の発展で様々な領域でAIが導入されるようになってきました。それに伴い通訳も「AIができるようになり、通訳者は将来必要なくなるのではないか」と、考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、通訳は単に単語を置き換えるのではなく、文脈や背景(コンテキスト)等を理解したうえで、話者の表情や場の雰囲気などのニュアンスをくみ取り、スピーカーが「言わんとするところ」を正しく捉えて伝える役目を担っています。社内に英語が話せる社員がいても通訳者を依頼する場合は多く、通訳者を介することでビジネス機会を最大化させるというメリットがあります。

本記事では、AIにはまだ到達しえない生身の通訳者だからこそ得られるメリットを紹介します。

AIで通訳はなくなる?通訳の実際とその効果

AIの言語処理技術の進展にともないGoogle翻訳等のAI翻訳の精度が高まる一方、AI通訳の現状はどうでしょうか?
日本語には漢字・カタカナ・平仮名の3種類の文字があり、かつ同音異義語が多く存在します。また、特有の文法や言い回し、曖昧な表現がある、特徴ある言語です。そのため、私たちは日頃から文脈や場面に応じて言葉を選び、使い分けてコミュニケーションを取っています。AIのディープラーニングが進み、将来的に日本語通訳の実用化が可能になるかもしれませんが、その日がいつになるか、まだはっきりとした予測はできません。

サミット(主要国首脳会議)などの国益が介入する会議や、自社と他社双方の利益が介在するビジネスの場において、「正確な意思の疎通」や「円滑で良質なコミュニケーション」はビジネス成功への重要な要因となります。言葉を正確に訳し、会話の奥に潜むスピーカーの意図も汲み取ったうえで通訳できるのは、経験と実績を兼ね備えた通訳者のみが対応できる技といえます。

次に、そうした通訳者がどのような場面で活躍し、効果的なコミュニケーションを実現しているかを紹介します。

国益を担う会議を裏方として支える通訳者

「G7」や「G20」などの主要国首脳会議や、「APEC」「ASEAN」などの政府間経済協力会議を始めとする国際政治の場でも、通訳者は重用されています。

政治と経済は直結しており、国益を守り、各国と厳しい交渉をしていくプレッシャーと緊張感ある場で、通訳者は自国と他国のスタンスを理解し、話者のニュアンスをくみ取り、高い精度で的確かつ正確な訳出をすることが求められます。
複数の国が話し合う国際政治の場では、同じ言語でも話者の国や地方によって、異なるなまりや表現がある場合があります。通訳者はそれを瞬時に理解し、通訳しなければなりません。こうしたことに対応できるのが、熟練したプロの通訳者です。

通訳者は、会議を成功へと導くキーファクターの一つです。

Withコロナで求められる通訳のかたち

AI通訳の実用化が期待される一方、長引くコロナ禍で、リモート環境での通訳が可能な仕組みやプラットフォームの開発が急速に進められました。対話形式が“対面”から“オンライン”に代わり、場所を選ばずに開催できるZoomやTeams、Webexでのミーティングやウェビナーが増加し、通訳もオンラインでの対応が求められるようになりました。

オンライン通訳は、通訳者の出張不要、資料の印刷不要、通訳者向けの場所の設置が不要など、手配の手間が減ることから、通訳依頼に対するハードルが下がります。

現地とオンラインを組み合わせたハイブリット形式での開催が多い大型国際会議でも、zoomの同時通訳機能や同時通訳のプラットフォームが取り入れられています。通訳者は遠隔地から通訳音声を配信し、会場に来られない参加者はリモートで通訳を聞くことができるようになりました。リモートでの参加は、時間・費用・身体的疲労削減につながります。

同時通訳には様々なプラットフォームがあります。当社が独占販売契約を締結している遠隔同時通訳プラットフォーム「RSI X」は、通訳者も聴講者も操作しやすいユーザーフレンドリーな画面で、高いセキュリティ性能を保持し、独自の圧縮技術で音質を損なうことなくデータ通信量を低く抑えた、信頼性と安定性に優れた製品です。このような同時通訳プラットフォームを活用すると、オンライン環境においても通訳の質を落とすことなく、会議を成功に導くことができます。

グローバル化=英語ではない!多言語対応が求められる通訳

通訳を必要とする会議の約8割が英語ですが、必要とされる言語は英語だけではありません。
中国語、韓国語といった近隣国の言語や、フランス語、スペイン語、ロシア語といった国連の公用語、そしてインドネシア語、タイ語、ベトナム語といったASEAN諸国の言語の通訳も、国際的な場面では求められています。それは、母国語で意思や意見を述べることのできる「発言者間の対等性の確保」のためです。首脳や大臣との二国間会談では相手国の言語の通訳者、日中韓といった三カ国の会議ではそれぞれの言語の通訳者が通訳します。

グローバル化した世界で多様性を受け入れるためには相互理解が大切です。だからこそ、より正確な通訳が求められています。その役を担っているのは現時点ではAI通訳ではなく、プロの通訳者です。

通訳でお困りの際はお気軽にお問い合わせください

JCS(日本コンベンションサービス)の通訳サービスは、ニーズが多い英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ロシア語のみならず他言語にも対応しており、世界の公用語の99%以上をカバーしています。業界トップクラスとなる2,000名以上の通訳者が登録し、分野ごとに専門性の高い通訳者を手配することができます。

オンライン会議の普及で世界がボーダーレス化し、ビジネスのグローバル化もより加速しています。JCSは、言葉の壁を越えたストレスフリーなビジネスの場で、ビジネス機会を最大化させることができる「通訳サービス」を提供します。

Written by 堀 朝子

日本コンベンションサービス株式会社
インターナショナルコミュニケーション事業部 会議通訳部

※本稿に記載している情報は執筆時点のものです。
 

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