コラム

2017.09.04

インハウス通訳者の働き方とキャリアアップを目指すための3つの方法


語学のスキルを活かした専門職である通訳。日本社会のグローバル化に伴い、IT系を中心に多くの企業で通訳の仕事の需要が高まっています。通訳者というとフリーランスの方も多くいますが、今回は、インハウス通訳者としてキャリアアップを目指すための3つの方法をご紹介します。

語学だけでなく得意分野の勉強を続ける

通訳の世界で仕事をするためには、生涯にわたって勉強を続ける覚悟が必要です。語学力だけを磨くのではなく、専門分野への知識を深めることが何よりも大切。キャリアアップを目指すなら、自分の得意分野を作り、社内外にアピールできる強みにしましょう。

インハウス通訳者の需要が多いIT業界や金融業界などで働く場合は特に、専門知識が求められるでしょう。技術革新や変化のスピードが速い業界で活躍したいなら、業務時間外でも自主的に知識を深める努力が必要です。裏を返せば、常にモチベーションを高く保って努力を続けていけるだけの、興味を持てる専門分野を見つけることが大切だといえるでしょう。

翻訳業務もスキルアップのチャンス

インハウス通訳者の仕事は通訳だけにとどまりません。通訳の仕事が少ないときには翻訳業務を手がけることも多いからです。専門である通訳の仕事ではないため、片手間に行うなど軽い気持ちで取り組む人も少なくありません。中には翻訳業務をやりたがらない通訳者もいますが、通訳者としてのスキルアップを図りたいなら、翻訳業務にも積極的かつ真剣に取り組んだほうがいいでしょう。なぜなら、翻訳業務を通して通訳業務に活用できる貴重なノウハウを身につけられるからです。

翻訳では特定の業界や分野だけの専門用語や表現、シチュエーションに沿った適切な翻訳が必要になります。それらの知識を吸収することで語彙力や表現力が大幅に鍛えられるため、瞬時の判断が必要とされる通訳の仕事にも大いに役立ちます。リテンションのスピードが向上すれば、通訳者としてのパフォーマンスを上げることが可能です。展示会やシンポジウムなどコンベンションの場でも、的確な同時通訳やウィスパリング通訳を可能にできるでしょう。

専門職として転職によるキャリアアップを狙う

業界を問わず、キャリアアップのための転職も積極的に狙っていきましょう。ただし、理解しておくべき点として、通訳者は専門職であり、一般の会社員のように正社員として雇用されるケースはまれだということです。そのため、安定性の高い正社員を目指して転職をするのではなく、様々な環境に身を置いて実績を積むことが大切です。転職によるキャリアアップの例としては、以下の流れが参考にできます。

  1. メーカーのITプロジェクトで現場レベルのミーティングを通訳する
  2. ITコンサル会社で金融システムのプロジェクトに参加し、クライアントとのミーティングやテレビ電話などを用いた同時通訳を経験する
  3. ITコンサル会社で経営や人事など幅広い領域に対応した社内通訳を行う

転職によって業界や分野の幅を広げ、通訳の需要が高い領域での実績を伸ばしましょう。通訳者としてのレベルを上げていくことがキャリアアップにつながります。

転職回数を気にせず積極的に行動することが大切

一般的な会社員の場合は、転職回数の多さが採用において不利になることが少なくありません。企業側から長く働ける人材かを疑問視されるからです。しかし、通訳者を続けるのであれば、転職回数の多さを気にし過ぎる必要はありません。通訳者に必要なのは実力とスキルです。職歴が増えることを気にするよりも、より有用な経験を得られる仕事に就くことを第一に考えてみてください。目指すキャリアアップの道に近いと思える仕事を見つけたら、果敢に飛び込んでいくことも大切です。

学校に通うなど通訳技術を磨き続ける

流暢に外国語を訳せることは、通訳者として当たり前のスキルです。語学力を磨きながら先述の語彙力と表現力を含めた通訳スキルを持ってこそ、社会から求められる通訳者といえるでしょう。そのため、仕事だけでなく、プライベートな時間も通訳の勉強を取り入れることで、技術を磨き続けることが大切です。

通訳技術を取得するには国内外の通訳訓練校のプログラムを修了することが必要なので、すでに多くの通訳者には通学経験がおありでしょう。自分で勉強するだけではモチベーションを保ちづらい場合には、卒業後にも通訳学校に通い続けたり、通訳セミナーに参加したりする方法もあります。学校やセミナーでは金融や医療、技術系など幅広い専門分野別の講座も開設されているので、転職によって異業種を目指す人にとっては貴重な学びの場にもなるでしょう。

第三者の評価を参考にして成長につなげることが大切

通訳訓練学校や養成学校に通うメリットは、技術を学べる点だけではありません。自分の通訳スキルがどのレベルにあるのかを客観的に知ることができます。また、転職によって就業環境を変えることで、より高いレベルの通訳者やライバルと呼べる存在に出会えれば、大きな刺激になるはずです。これはインハウス通訳者ならではのことで、一定の期間にわたって同じ勤務先で就業し、同じ領域を担当している通訳者やクライアントなど第三者からの評価を受けられるため、現状の語学力や語彙力などのスキルを自覚しやすくなるでしょう。

現状の弱点や問題点を理解し、改善のための努力によって通訳者としての能力を高めることで、周囲からの評価が上がるという好循環が生まれます。インハウス通訳者としての実力を高めていけば社内での地位が上がり、より上流にある企業へ転職できる可能性が高まるなど、キャリアアップにつなげることができます。

インハウス通訳者はスキルアップの機会に恵まれている

インハウス通訳者としてキャリアアップするには、常に現状と向き合い、技術やセンスを磨き続けることが重要です。案件ごとに職場や一緒に働く人が変わるフリーランスとは違い、インハウスは同じ企業内で一定期間、ほかの通訳者と一緒に仕事ができる機会に恵まれています。自発的な勉強以外にも、第三者の評価を受けることで効率的にスキルアップを目指しましょう。

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