コラム

2017.09.03

翻訳者の働き方の違いとキャリアアップ術


外国語を日本語に訳し、業務を円滑に進めるために欠かせない翻訳の仕事。昨今のグローバル化とIT技術の進歩により、海外の取引先とやり取りのできる環境が整っている現在、翻訳者の働き方も変化しつつあります。今回は、インハウス翻訳者とフリーランス翻訳者、それぞれの働き方と、キャリアアップの方法をご紹介します。

翻訳者の働き方にはインハウスとフリーランスの2種類がある

翻訳者の働き方は大きく、企業に属する「インハウス翻訳者」と、独立した「フリーランス翻訳者」に分かれます。インハウス翻訳者は会社員として規定された時間内で勤務します。通勤の労はありますが毎月決まった給与がもらえるため収入面では安定しています。企業の社会保険や労災に加入できるメリットもあるため、生活スタイルも含めて安定した働き方を希望する人に向いています。

フリーランスの翻訳者は独立した個人事業主として仕事を請け負います。在宅のスタイルが多く、自分の裁量によって働く時間や場所をコントロールしやすいため、自由度の高いライフスタイルを実現することが可能です。企業に縛られない働き方ができるため、組織に属したくない人やプライベートな時間を重視したい人に向いているといえるでしょう。

インハウスとフリーランスは"仕事の対価"が違う

インハウス翻訳者とフリーランス翻訳者には「企業から雇用されている」か「独立している」かの大きな違いがあります。そして、仕事への対価の付け方も違います。毎月決められた仕事をこなし、一定の給与がもらえるインハウスの働き方に対し、フリーランスは納品物の質と量で収入が決まります。そのため、自分で仕事を取らなくてはならないフリーランス翻訳者の方が、社会の変化に敏感でなくてはなりません。

また、インハウス翻訳者は自社の案件がメインであり、取り組む分野がある程度限られますが、フリーランス翻訳者の場合は幅広い分野の案件を手掛けることも少なくありません。同じ語学を扱う通訳者の場合は経験や勉強量に比例した実力差が現れやすいですが、翻訳者の場合は経験や勉強だけでは得られない、異なる言語同士を最適なニュアンスに翻訳する"語学のセンス"が実力差や仕事の対価につながります。フリーランス翻訳者はその"語学のセンス"がより求められるといってよいでしょう。

インハウス翻訳者のキャリアアップ方法:転職

会社員として働くインハウス翻訳者は、仕事で評価を集め、給与(年収)を高めていくことが可能です。1つの会社でキャリアを積む方法もありますが、スキルアップのために異業種へ転職することもキャリアアップに効果的です。とくに、社会的にも需要が高いIT分野や金融分野などで実績を積むことにより、市場価値を高めやすくなります。お堅い分野の仕事が苦手だったり、専門分野がなかったりする方は、たとえば、ゲーム業界で翻訳経験を積むのもオススメです。ゲームやアニメなどの日本のエンタメコンテンツは海外でも人気が高く、翻訳に関わる仕事の需要が高まっていることは、ぜひ押さえておきましょう。

どんな仕事にも積極性を持つことがキャリア形成に必要

翻訳者はキャリアアップのための転職も狙いやすい職種です。様々な分野における翻訳の実務経験を積むことにより、知識とスキル、経験年数を増やすことができます。転職によって畑違いの業界に採用され、自分にとって未知の分野を担当することになっても、柔軟に対応していくことがインハウス翻訳者としての成功のコツです。そして、入社後は与えられた範囲の仕事だけでなく、幅広い業務に対して積極的に手を挙げていくことが重要です。様々な依頼に対する柔軟な対応力を得られれば、任せてもらえる業務の範囲や職務経験を広げることができます。

フリーランス翻訳者のキャリアアップ方法:センスと強みを活かす

フリーランス翻訳家のほとんどがインハウスとして経験を積み、その後に独立しています。在宅の仕事がメインとはいえ仕事を自分で探す必要があるため、依頼先の担当者との打ち合わせや契約を交わすなど、一定のビジネススキルは必須です。フリーランスのキャリアアップのカギは、幅広い業種の仕事を浅く広く請け負うよりも、特化した実力を持つ分野で売り込むことです。自分の翻訳に対する強みを理解し、センスと合致するクライアントを見つけることで、継続的に仕事をもらうことができます。信頼を勝ち取ることができれば依頼の単価も上がり、より高度な仕事を任せてもらえるため、収入の増加につながります。

納品物の評価が収入に直結する

フリーランスの世界は実力が最優先されるため、提出する納品物の品質ですべて評価されるといってもいいでしょう。仕事のクオリティが低いとみなされると、同じクライアントから声をかけてもらえなくなることも少なくありません。実力と自分の売り込み方次第ではインハウスよりも多くの収入を得られる半面、すべてが自分次第であるがゆえに、継続的に安定収入を得られない時期もあるでしょう。数をこなすために、ときには単価の低い仕事も請け負う必要もあるなど、非常に厳しい世界なのです。

翻訳者のキャリアアップの道はインハウスとフリーランスで異なる

フリーランス翻訳者として働く場合、センスを活かして仕事を勝ち取っていく必要があります。多くの場合は生活が安定しにくいため、インハウスとしての働き方に戻る人も少なくありません。インハウスの翻訳者は専門職ながらも一般的な会社員と同じような働き方ができますが、実力で評価される点は同じで、組織の中で働くためのコミュニケーションスキルなども必要です。いずれにせよ、需要がありやりがいも感じられる仕事なので、双方の働き方を比べてみてご自身に合ったキャリアアップの方法を実践してみてください。

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