2016.04.11
国際資格CMPのコラム第13弾「MANAGE WORKFORCE RELATIONS」
当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第13弾です。
イベントを成功させるためには、適切な訓練を受けたプロジェクトメンバーが組織としてプロジェクトに取り組むことが求められます。今回は、各メンバーの役割期待を決めて達成度を測ること、問題解決、メンバー間のコミュニケーション促進など、workforce relations management(プロジェクト組織管理)はプランナーにとってのコア・コンピタンス(core competence、組織内部で培ったさまざまな能力のうち、競争のための手段として最も有効なもの)について取り上げ解説します。
CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。
SKILL 12: MANAGE WORKFORCE RELATIONS
Sub skill 12.01 – Supervise Staff and Volunteers
Sub skill 12.02 – Manage Teams
CMP出題頻度:0-2問(合計150問)
イベントを成功させるためには、適切な訓練を受けたプロジェクトメンバーが組織としてプロジェクトに取り組むことが求められます。各メンバーの役割期待を決めて達成度を測ること、問題解決、メンバー間のコミュニケーション促進など、workforce relations management(プロジェクト組織管理)はプランナーにとってのコア・コンピタンス(corecompetence、組織内部で培ったさまざまな能力のうち、競争のための手段として最も有効なもの)であると言えます。プロジェクト組織管理を行うためのリソースとしては、jobdescriptions(職務記述書)、performance expectations(業績期待)、organizational structures(組織構造)、labour legislation and agreements(労働法・労働協定)といったものがあります。
しかしCMPの生まれたアメリカと日本では、その組織マネジメントに大きな違いがあります。アメリカのプロジェクト組織では各メンバーの担当分野が明確に分かれており、それぞれがスペシャリストとして、job descriptionsで定義されている業務のみを行うのが一般的です。いっぽう日本では各メンバーの担当分野や責任範囲が明示されることはあまりなく、ジェネラリストとして臨機応変に助け合いながらプロジェクトを進めていく傾向が強いです。こうした違いを念頭に置いたうえで、今回の章を読み進めていただければ幸いです。
スタッフ・ボランティア管理
Sub skill 12.01 – Supervise Staff and Volunteers
オリエンテーションや研修だけが人材育成の場ではありません。管理者は日々の業務を通じて、規範となる行動を示す必要があります。ですからプロジェクトを率いるプランナーも、同僚、上司、部下、サプライヤー、会議参加者などと関わる際、行動規範を日々実践して周囲に示す必要があるのです。 すべての組織において、スタッフに対する定期的な評価フィードバックの仕組みが必要です。公式・非公式な面談によって、スタッフは必要なサポートを得たり、job descriptionsで示された役割と責任を自分がどれだけ達成できているかを知ることができます。スタッフにとって、評価を受けるということは非常にストレスの大きいことなので、あらかじめ評価方式や評価スケジュールを明確に示しておくことが望ましいです。また、逆に彼らからのコメントやフィードバックを受け付ける機会があることも事前に示しておく必要があります。 フィードバックを実施するにあたっては、「コーチング」と「公式評価」の2種類を設けることが望ましいです。コーチングの目的はスタッフの成長を促し、良好なコミュニケーションを維持することであり、特に新しく加わったスタッフに対しては頻繁に実施します。スタッフにストレスを与えることなく、日々の課題や改善点について話し合うことのできる良い機会です。また、ボランティアスタッフに対してもこうした機会を持つことを忘れないでください。 公式な評価は定期的に行い、文書化します。スタッフのパフォーマンスに対する総合評価、特筆すべき優れた点、前回のコーチング・セッション以降の改善点、次回の評価に向けた目標設定などが行われます。評価結果は面談を受けて再調整することもあり、最終的には給与や諸条件に反映されます。 しかしながら、こうしたプランナーの努力に関わらず、プロジェクト組織の内部で個人的な感情のもつれがトラブルに展開してしまうことがあります。めまぐるしく物事が進みストレスの高まる会期直前・期間中にありがちです。現場にトラブルを持ちこまずに済むよう、できるかぎり芽は早めに摘んでおきたいものです。組織内トラブルの解決策としては下記のような点が挙げられます。
- ふだんから礼節あるコミュニケーションを推奨する
- トラブルの原因を可視化・明文化する
- トラブルの解決に向けて双方の当事者が意見を述べる機会を持つ
- 解決策について双方の合意を取る
- 関係者に対する感謝の意を示す
- 解決後の経過についてフォローアップを行う
トラブルの中にはプロジェクト組織内での解決がつかないものもあります。こうした場合は、上位マネジメントや組織CMP(Certified Meeting Professional) から 考えるMICEのグローバルスタンダードと日本基準外の第三者の手助けを受けることもありうるでしょう。 そもそもスタッフやボランティアスタッフは、イベントやイベント主催団体に対するstellar contributors(顕著な貢献者)でもあります。こうした貢献に対する表彰制度を設けることで、よりポジティブな動機付けを行い、優秀なスタッフの定着率を高めることができます。表彰、達成証明証の発行、手書きのthank you cardなど、さまざまな工夫を凝らしてみましょう。例えば大きなイベントでは多くの臨時スタッフがインフォメーションデスクや誘導係を担当しますが、彼らのパフォーマンスはイベントの印象を大きく左右することになります。期待以上のパフォーマンスを達成したスタッフには、たとえば就職活動の際に活用できるような推薦状を発行するのもいいでしょう。 ボランティアスタッフに対してはさらに特別な配慮が必要です。無給で職務に当たっているボランティアスタッフに対しては、軽食やギフトなど、感謝の意を示すことが不可欠です。無料でセッションを聴講できることや社交行事に参加できることなど、ボランティアを志願する動機はさまざまですが、「業務上の責任」と「見返りとしての利益」を明確に定義しておくことが重要です。採用・オリエンテーションの時点で彼らの求めているものを把握して、可能な限り提供する努力が必要となります。
チーム管理
Sub skill 12.02 – Manage Teams
イベント産業における「チーム」の役割は非常に重要です。ひとりでは成し得ないタスクを完了させることができますし、さまざまな視点が革新をもたらします。チームメンバーの多様性がイベントの成功をもたらすのです。世の中のグローバル化はどんどん進んでおり、イベントの世界もこの例外ではありません。食事禁忌、多言語対応、モビリティなど、ステークホルダーからの多様なニーズに応える必要があり、そのためのcivil discourse(相互理解に向けた対話)が必要です。多様性には下記のような要素が含まれます。
- 性別(gender)
- 年齢(age)
- 言語(languages)
- 民族性(ethnicity)
- 人種(race)
- 性的指向(sexual ability)
- 身体能力(physical ability)
- 技術的能力(technological ability)
- 学習形態(learning styles)
プロジェクト組織におけるリーダーの役割は、イベントのビジョンに合わせてスタッフを配置することです。それぞれの役割分担を明確にして、規範を示し、そのパフォーマンスを評価します。個人および組織の成長を促し、チーム編成時や新メンバー参加時には組織構成を明確にし、組織内でトラブルが発生した時には自信と具体性と忍耐をもってその解決にあたります。 健全なプロジェクト組織を保つためには、明確なコミュニケーションと公平性がとても重要です。労働時間が長く、めまぐるしい環境の変化や大きなプレッシャーにさらされるイベント産業においては、スタッフやボランティアのモチベーションを保つための適切な評価・表彰システムがとても重要だと言えるでしょう。
CMP最新情報
CMP updates
東京都内では例年よりすこし早く桜が咲き始めました。春めいた雰囲気の中、この1年間でCMPに合格されたみなさんを囲み、3月23日に都内でお祝いの会を設けることになりました。CMP試験は年4回行われますが、新しく合格者が出るたびに同様の集まりを設けて、CMPどうしのネットワーキングや情報交換に役立てることができればと考えています。この合格お祝いの会で、読者のみなさんにお会いできる日を心待ちにしています。
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押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)
Workforce relations ---------- ワークフォース・リレーションズ
Job descriptions ---------- 職務記述書
Core competence ---------- コア・コンピタンス
Performance reviews ---------- 業績評価
Conflict resolution ---------- 紛争解決