コラム

2016.06.10

国際資格CMPのコラム第15弾「MEETING OR EVENT DESIGN」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第15弾です。

デザイン思考(design thinking)という言葉を聞いたことはありますか?デザイン思考とは「デザイナー的な感性や手法を用いて、顧客のニーズ(desirability)をテクノロジー面での実現可能性(feasibility)および現実的なビジネス戦略(viability)と整合させていく事で、新しいビジネス価値を産み出していくこと」です。この手法は現在、さまざまな分野のビジネスで注目されていて、イベントのデザインにも応用することができます。今回は、イベント・デザインについて取り上げ解説します。
 
CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 14: MEETING OR EVENT DESIGN
Sub skill 14.01 – Determine Programme Components
Sub skill 14.02 – Select Programme Content and Delivery Formats
Sub skill 14.03 – Structure and Sequence Program Components
Sub skill 14.04 – Measure Event Success

CMP出題頻度:5~ 7問(合計150問)


デザイン思考(design thinking)という言葉を聞いたことはありますか?この概念が注目されるきっかけとなったアメリカのデザインコンサルティングファームIDEOのCEOであるティム・ブラウンは、"Design thinking can be describedas a discipline that uses the designer's sensibilityand methods to match people's needs with what istechnologically feasible and what a viable businessstrategy can convert into customer value and marketopportunity" (Brown, 2008)と表現しています。つまり、デザイン思考とは「デザイナー的な感性や手法を用いて、顧客のニーズ(desirability)をテクノロジー面での実現可能性(feasibility)および現実的なビジネス戦略(viability)と整合させていく事で、新しいビジネス価値を産み出していくこと」といったところでしょうか。
この手法は現在、さまざまな分野のビジネスで注目されていますが、イベントのデザインにも応用することができます。ブラウンによるデザイン思考のプロセスをイベントデザインに応用すると下記のようになります。


Phase 1: inspiration
イベントの「解決すべき課題」を特定する

Phase 2: ideation
ステークホルダーを巻き込んで課題解決のアイデアを模索する(この際、試作や図示などによりアイデアを「可視化」することが重要)

Phase 3: implementation
アイデアの実現


イベントデザインにはさまざまな方法論が存在しており、代表的なものにMPIが定めている「イベントデザインにおける5つの原則」(Nawn,2013)があります。それぞれに該当するデザイン思考のフェーズと合わせて見ていきましょう。

1. 「評価」の原則 (Principle of assessment and evaluation)(Phase 1: inspiration)

この原則が重要視しているのは、イベントの目的とゴールを明確かつ測定可能なものにすることです。最終的に適切なイベント評価を行うため、イベントをデザインする際、3つの問いを追求します。

  1. なぜこのイベントを開催するのか?
  2. このイベントで何を達成するのか?
  3. イベント終了後、参加者に何を達成してもらいたいのか?

2.「有意義な関与」の原則(Principle of meaningful engagement)(Phase 1: inspiration)

物理面(physically)・知的側面(intellectually)・感情面(emotionally)でステークホルダーが関わることのできるようなイベントをデザインするという原則です。そのためにはニーズの把握が必須となります。

3.「分散学習」の原則(Principle of distributed learning)(Phase 2: ideation)

イベントにおける分散学習とは、イベント開催前、開催中、終了後それぞれにコンテンツ(公式/非公式)を分散することで、知識などの定着率を高めるという考え方です。分散学習をデザインするにあたっては、下記のような問いを追求します。

  1. どんなプログラム構成・形式が参加者のニーズに合っているか?
  2. 参加者の経歴は?参加メリットを見出してもらうにはどうすればよいか?

4.「コラボレーション」の原則(Principle of collaboration)(Phase 2: ideation)

イベントの検討段階からステークホルダーに直接コンサルティングを行い、共同作業を進めることにより、そのニーズやアイデアをプログラムに反映するという考え方です。

5.「体験」の原則(Principle of experience)(Phase 2: ideation, Phase 3: implementation)

参加者の視点から考えたときに、イベントに参加したことがより有意義で思い出深いものになるようにデザインするという原則です。

プログラム構成要素の決定

Sub skill 14.01 – Determine Program Components

イベントのプログラム構成要素には、教育セッション、チームビルディング、エンタテインメント、飲食、展示、コミュニティサービス(CSRなど)といったものがあります。プランナーはその検討に当たり、イベントの目的はもちろんのこと、予算、スポンサー企業を含むステークホルダーのニーズ、利用可能なリソース、参加者の属性などを踏まえてプログラム構成を決めることになります。この際、過去のイベントに対する評価結果は極めて重要な情報となります。特に重要なのは下記のような項目です。

  • 人気のあるセッション形式
  • 効果的なコミュニケーション方法(参加者セグメント別)
  • 参加者にとって有意義なプログラム構成要素
  • 過去のプログラムのうち成功だったと感じたもの
  • 会期中のスケジュール配分
  • 追加/中止してほしいプログラム

コンテンツとセッション形式の選択

Sub skill 14.02 – Select Program Content and Delivery Formats

ここでは主に教育セッション、研修、ネットワーキングにおけるコンテンツについてまとめます。コンテンツは目的に基づいて決める必要がありますので、参加者のニーズ、それぞれが抱えている課題、参加者に合わせた学習スタイルなどを考慮してコンテンツの検討を進めます。参加者アンケート、プログラム委員会からのフィードバックなども参考にします。これまでずっと継続してきたスタイルがある場合も、常にその意味を考え直すようにしましょう。
スピーカーの選定については次章で詳しく触れますが、ステークホルダーの目的に即した人選を行う必要があります。また、スピーカーは、講演の目指す効果、受講者の属性、会場のセットアップ、利用可能なテクノロジー機器、スピーカーの役割期待などを把握したうえで講演に臨みます。また、ハイブリッド・ミーティング(セッション映像をインターネット等で中継して遠隔地からも参加できるようにする方式)や収録など、スピーカーの映像を収録する場合は、事前に同意書を取り付ける必要があります。
さらに、ゲーミフィケーションを取り入れる場合もあります。ゲーミフィケーションとは”the process of game-thinkingand game mechanics to engage users and solve problems”(Zichermann & Cunningham, 2011)と定義されており、ゲーム感覚で競うことによる参加者の積極的関与を狙うための手法です。しかしイベントによって向き不向きがありますので、ステークホルダーが強い関心を持つテーマで取り入れるのがよいようです。
なお、日本ではセッション形式というと「シアター形式」「スクール形式」がほとんどですが、海外ではバラエティに富んだセッション形式があります。主要なセッション形式は下記のようなものがあり、中には日本と微妙に解釈の異なるものもありますので、CMPを受験されない方は、名称のみざっと目を通していただければよいと思います。CMPを受験される方は、9th CIC Manual P143を参照のうえ、すべて把握しておいてください。

  • Audience reaction team
  • BarCamp
  • Breakout sessions
  • Concurrent sessions
  • Buzz sessions
  • Colloquium
  • Debate
  • Fishbowl
  • Keynote sessions
  • Interview
  • Open space technology
  • PechaKucha
  • Seminar
  • Symposium
  • Unconference
  • Workshop
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Design thinking ---------- デザイン思考

    Event design ---------- イベント・デザイン

    Gamification ---------- ゲーミフィケーション

    Program flow ---------- プログラムの流れ

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