2018.09.25
MICEビジネスは「インバウンド観光」の切り札になるか??
2019年のラグビーワールドカップをはじめ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックなど大規模な国際的イベントを目前にひかえている日本において、訪日外国人の数は現時点でも好調に推移しています。政府は2020年に訪日の観光客数を4000万人に増やすと発表していますが、目標達成にはアジアに比べて数が少ない欧州・欧米からの訪日客をいかに増加できるかが重要と言えます。
そこで今回は、インバウンド観光を支える一手として以前から注目されてきた「MICEビジネス」をテーマに、観光産業のビジネスモデルでどのように活用できるかについて、詳しくご紹介していきます。
そもそもMICEビジネスって?
MICEとは、主にアジア圏内で使用されている造語で、Meeting, Incentive, Convention (Conference), Exhibition(Event)の4ジャンルの頭文字を繋げて「MICE」と呼ばれています。ミーティング・ビジネスを核とするMICEにおける、2016年の日本での経済波及効果は約1兆590億円であったと観光庁が発表しています。この数字は、直接的な経済効果だけでなく、ビジネス・イノベーションの機会創出や、国・都市の競争力向上、新たな雇用促進など、多角的な観点でもインパクトが大きい産業として注目されています。
では、「MICE」をインバウンド観光の「ビジネス」に繋げてイメージできるよう、上記4つのジャンルの定義付けや特徴を分かりやすく解説していきます。
M(ミーティング)
主に企業が行う「様々な形態のミーティング」を指しており、セミナーや研修、役員会議、内定式、入社式なども含まれます。例えば、FinTechをテーマにした国際規模の投資セミナーや、外資系企業のキックオフミーティングなど、企業主催の大型会議の事例が多いのも特徴の1つです。
I(インセンティブ)
報奨・研修・招待旅行などを総じた「インセンティブ・トラベル」のことを言い、成績優秀な社員に対して報酬としてプレゼントされる「報奨旅行」を例にするとイメージしやすいと思います。日本の企業は、目標達成した社員の功労をたたえる際、ギフト券や賞金など「モノを送る」ことが多いですが、海外の企業では社員に「特別な旅行へ招待」するインセンティブツアーの取り組みが浸透しています。JCSが手がけた直近事例だと、FIFAワールドカップ「ホスピタリティ・プログラム」を活用した報奨旅行などが、この分野に当てはまります。
C(コンベンション・カンファレンス)
首脳会談やサミット、2019年に日本開催されるG20等の「政府系会議」がこれに該当します。報道機関がニュースとして大きく取り上げるケースが多く、世間一般的には一番イメージしやすい分野と言えるでしょう。また、現代医学や薬学、工学、教育など、各分野の学会・研究機関に属するメンバーが定期的に集まり、シンポジウムを通して意見交換や研究発表を行う大規模な会議も、この分野に入ります。世界中から1000名以上の研究者が一箇所に集まる大規模な国際会議から、500名以下の会議まで、規模感は多岐に渡ります。
E(エキシビション・イベント)
エキシビションは「展示会」を意味し、具体的には各種EXPOやトレード・ショー、博覧会などを指します。前述したコンベンション・カンファレンスに付随する形で開催されるケースもあり、例えば2019年3月に開催される市民展示イベント「健康未来EXPO 2019」は、4年に1度の医学・医療のオリンピックとも言われている「日本医学会総会」の一環として行われます。
なぜインバウンド観光と関係があるのか?
2017年の観光庁の調査データを見ると、日本に訪れる訪日外国人の来訪目的は「観光・レジャー」が全体の約75%でした。つまり、旅行以外の目的の訪日客が約25%を占めることになります。では「業務目的」の訪日割合はというと、全体の約16%を占めています。ここでいう「業務目的」とは、前段で解説したMICEの4ジャンルを指しており、ビジネスで訪日した外国人を表しています。
ここで1つ、読者の皆さまに想像してほしいのが「ビジネス目的で訪れた外国人は、何もせずに帰国してしまうのか?」という点です。せっかく訪れた日本の文化を体験せず、観光もせず、宿泊しないで帰路に向かってしまうのでしょうか。例えば、日本人の皆さまが研修や仕事で海外出張する時、どのように過ごされるのでしょうか?そう、ここにビジネスチャンスが存在するのです。
ビジネス目的の訪日外国人に注目
企業ミーティングや研修、国際会議、展示会・見本市など、様々なビジネス目的で訪日している外国人に共通していることがあります。それは「観光・レジャー」目的の旅行者と同様に、ホテルや旅館に宿泊して、レストランで食事をとり、電車やバス、タクシー、レンタカー等の交通機関を利用する点です。
例えば、国際会議の参加を目的に訪日していた外国人の場合、会議開催のスケジュール前後に余裕があれば、日本国内の観光を十分に楽しむことができます。この傾向の裏付けとなるのが、海外からの参加者に見られる2つの特性「滞在日数が長い」「配偶者等の家族同伴率が高い」という国土交通省の調査データです。そして、これらの新しい観光需要に狙いを定めた取り組みや施策を、アフターMICE、アフターコンベンションと言います。
編集後記
「MICEビジネス」と「インバウンド観光ビジネス」の接点はイメージできたでしょうか?MICEを国際会議や展示会などの略称として捉え、観光とは別物と考えてしまうと、ビジネスにおける機会損失が発生している可能性がありそうですね。日本におけるインバウンド事業は益々の盛り上がりを見せ、民間企業間ではFIT層や団体客をターゲットに激しい競争が見られます。しかし、このMICEビジネスに注目してみると、まだまだ拡大する可能性があると思います。
今後、日本のインバウンド観光を延ばしていく上では「MICE」は重要なスローガンになり得ます。ここ数年で国際的なイベントを多々控えている日本を舞台に、今後もMICEビジネスは大きく成長し続けるでしょう。
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