2016.07.19
国際資格CMPのコラム第16弾「ENGAGE SPEAKERS AND PERFORMERS」
当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第16弾です。
イベントの成功において、スピーカーや出演者はとても重要な役割を果たします。このためスピーカーの選定にあたっては、イベントの開催目的に基づき、イベントの開催形式や聴衆の属性などを考慮して選定しなくてはなりません。プランナーとしては、イベントのゴールを達成できるスピーカー・出演者を予算内で確保する必要があります。今回は、スピーカーや出演者の選定について取り上げ解説します。
CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。
SKILL 15: ENGAGE SPEAKERS AND PERFORMERS
Sub skill 15.01 – Determine Meeting or Event Requirements for Speakers and Performers
Sub skill 15.02 – Develop Selection Criteria/ Strategies
Sub skill 15.03 – Select Candidates
Sub skill 15.04 – Secure Contracts and Communicate Expectations
CMP出題頻度:1~ 3問(合計150問)
イベントの成功において、スピーカーや出演者はとても重要な役割を果たします。このためスピーカーの選定にあたっては、イベントの開催目的に基づき、イベントの開催形式や聴衆の属性などを考慮して選定しなくてはなりません。プランナーとしては、イベントのゴールを達成できるスピーカー・出演者を予算内で確保する必要があります。
スピーカー・出演者の検討に向けて
Sub skill 15.01 – Determine Meeting or EventRequirements for Speakersand Performers
Sub skill 15.01 – Determine Meeting or EventRequirements for Speakersand Performersスピーカー・出演者を決めるにあたり最初のステップは、目的(objectives)と学習成果(learning outcomes)、そしてイベントへの要求事項(requirements)を定義づけることです。プロの講演者、経験豊かなファシリテーター、エンターテイナーなど、どんなタイプのスピーカー・出演者がふさわしいかを、イベントの属性と併せて検討してください。適切なスピーカーを選ぶことでイベントの価値は向上します。
「イベントの目的や学習成果を達成しうるか」という点でスピーカーを選びましょう。たとえば有名人を呼ぶ場合、「有名人だから」という理由で呼ぶのではなく、あくまで想定される成果に基づいて選びましょう。もちろん、有名人が登壇することでイベントの信頼性や注目度が上がるという効果や、参加するかどうかを迷っているメンバーの背中を押す効果が考えられるので、これはこれでイベントの成果と言えるでしょう。
スピーカーを探す方法はさまざまですが、そのひとつにスピーカーズ・ビューローを利用する方法があります。日本にも数多く存在する「講演依頼サイト」がこれにあたります。スピーカーズ・ビューローの利用は有料ですが、イベントの内容と予算に合わせたスピーカーを提案してもらえます。すでに依頼したいスピーカーが決まっている場合は、そのスピーカーの契約代行会社(booking agent)に直接問い合わせることでビューロー利用料を払わずに済みますが、いったんビューローから紹介を受けた後でそのスピーカーに直接コンタクトを取ることは業界倫理に反します。 スピーカー候補が決まったら、略歴や評判などの関連情報を入手します。可能であれば、実際の講演映像が得られるといいでしょう。著名なスピーカーは独自のウェブサイトを立ち上げており、そこで講演映像が見られることが多いです。これまでの著作物や所属団体、受賞歴なども判断材料になります。なお、最終的にスピーカーが決まったら、すみやかに仮予約を入れている他の候補者にも通知する必要があります。
バーチャル/ハイブリッドミーティング
Special Considerationsfor Virtual and Hybrid Meetings
バーチャル(オンラインのみ)およびハイブリッド(ライブ+オンライン)でのイベントが増えるとともに、これらのイベントを仕切ることができるホスト司会者のニーズが高まっています。この役割に最も適切なのは、ニュースキャスターなどカメラの前で話すことに慣れている人々です。アドリブ対応が必要であったり、テレプロンプターやIFB(interruptible foldback:放映中に外部指示を受けるためのイヤーピース)を使い慣れている必要があるなど、通常のイベントとは求められる素養がかなり異なるためです。プロの講演者もカメラ慣れしているので、内部関係者よりも、まずはこうした人々の起用を検討しましょう。聴衆の前で話すこととカメラの前で話すことは全く異なるのです。
バーチャル・ホストを起用する際には、スポーツやニュースの実況中継の経験を持つ放送プロデューサー(broadcastproducer)も併せて起用することをお勧めします。放送プロデューサーの主な役割はプログラム構成です。バーチャル環境であっても聴衆を飽きさせないためには、聴衆の心をつかむコンテンツのみならず、プログラム自体が放送用にフォーマットされている必要があるのです。
スピーカー選定基準・戦略
Sub skill 15.02 –Develop Selection Criteria/Strategies
基調講演やパラレルセッションのスピーカー、社交行事のエンタテインメント出演者、ワークショップのファシリテーターなど、イベントにはさまざまなタイプのスピーカー・出演者が存在します。あらかじめスピーカー選定基準を決めておくと、そのあとの講演依頼作業がスムーズになります。また、「基調講演では同じ人物を5年以内に再登用しない」といったルールを設ける場合もあるでしょう。
選定基準を決めるにあたっては、過去のイベント評価を参考に、ステークホルダーと相談して決めます。プログラム委員会による意見交換や選定基準のレビューもよく行われる方法です。
- 関心を持たれる講演内容
- 聴衆に合わせた講演ができる
- これまでの評判
- 著作物
- ソーシャルメディアでの活動
- 共感を呼ぶ講演(映像で判断)
さらにスピーカー選定にあたっての戦略も必要です。たとえばスピーカーズ・ビューローを起用するのか、プログラム委員会にゆだねるのか、オンラインで公募するのか。パラレルセッションはプログラム委員会に委ねて、基調講演のみスピーカーズ・ビューローに依頼する、といった使い分けが考えられます。
スピーカー候補者の選定
Sub skill 15.03 – Select Candidates
スピーカーの選定にあたっては、選定作業に携わる関係者が候補者の略歴、選定基準、講演の仮タイトルを参照できるようにします。候補者の講演に立ち会うことができる場合は、講演そのものだけでなく、聴衆の反応を見るようにしましょう。特定の聴衆にカスタマイズした講演内容であったかどうか、という点がポイントです。
スピーカーに講演費用を支払う場合、謝礼+実費費用を支払うケースや実費費用のみを支払うケースなどがあるので、その条件を明確にしておきます。また、講演に使用したプレゼンテーション資料などを配布・公開してよいのかどうかなども、あらかじめ確認しておきましょう。
講演契約とスピーカーへの案内
Sub skill 15.04 – Secure Contracts and Communicate Expectations
スピーカーが決定したら、主催者・スピーカー双方の条件を記載した合意書もしくは契約書を作成します。(スピーカーズ・ビューローとの契約となる場合もあります。)契約書にサインするまでは講演確定ではないと考えるスピーカーも少なくないので、なるべく早い段階で講演契約を締結しましょう。
- 交通手段
- 日時、場所、講演時間
- 宿泊・食事に関する情報
- 講演費用と支払方法
- 社交行事や他のセッションに参加してほしいかどうか
- スピーカーによる製品PRが可能かどうか
- 講演資料・配布資料の手続き
- 収録に関する合意事項
- キャンセル条項
- 映像音響機器に関する情報
- 法的義務
- ソーシャルメディア利用規約
(日本ではここまで細かく条件を記載しないことがほとんどですが、可能であれば盛り込んだほうがよいことは言うまでもありません。)
講演概要の事前提出を約束してもらうことも重要です。参加促進にもなりますし、スピーカー本人の準備の遅れを防ぐことにもなるからです。
よりカスタマイズした講演ができるように、スピーカーには主催団体や聴衆に関する情報を渡しておきましょう。主要人物のプロフィールや著作物、バズワード、イベントのテーマ、過去のイベント情報などです。他にどんなスピーカーが登壇するのかを知らせることで、講演内容の重複を防ぐことができます。
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押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)
Speakers bureau ---------- スピーカーズ・ビューロー
Virtual host ---------- バーチャル・ホスト
Broadcast producer ---------- 放送プロデューサー