コラム

2016.10.10

国際資格CMPのコラム第19弾「MANAGE TECHNICAL PRODUCTION」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第19弾です。テクニカル・プロダクション、すなわち映像機器を中心としたステージ上の演出について取り上げます。 

CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 18: MANAGE TECHNICAL PRODUCTION
Sub skill 18.01 – Determine Requirements for Staging and Technical Equipment
Sub skill 18.02 – Acquire Staging and Technical Equipment
Sub skill 18.03 – Install Staging and Technical Equipment
Sub skill 18.04 – Oversee Technical Production Operation

CMP出題頻度:2~ 4問(合計150問)


今月はテクニカル・プロダクション、すなわち映像機器を中心としたステージ上の演出について取り上げます。この分野における技術の進歩は目覚ましいものがあり、参加者にメッセージを伝えるための重要な要素で、さらにイベント予算に占める比率が大きいため、プランナーとしては常に学び続ける必要のある分野だと言えるでしょう。まずは技術が進歩しても変わらない基本ルールから確認していきましょう。

まずは必要な機能の検討から

Sub skill 18.01 – Determine Requirements for Staging and Technical Equipment

先月も解説した通り、イベントデザインにおいては、まず参加者に合わせた映像・音響機器を決めることが重要です。なぜならこの分野の進歩は非常に早く、必要な人員や予算が大きく変動しうるためです。全体予算や人員計画に最も大きな影響を与える部分なので、はじめに確定しておきましょう。
映像・音響機器を決める際の基本中の基本は「参加者全員からちゃんと見えること」です。このため、参加者の人数や使用する会場の条件を勘案して決定するわけですが、この際しばしば起こりうる問題として、あらかじめ会場に設けられているさまざまな制限が挙げられます。会場利用ルール、労働契約、消防法、安全性に関連した制限事項などです。
このため本来の検討の順番としては(1)なにを見せるかを決める(2)必要な映像・音響技術を決める(3)候補会場がその条件に見合っているかどうかを検証する、という順番になるでしょう。映像・音響の視点から会場を検討する際の留意点には下記のようなものがあります。

  • 収容人数:施設が提供する収容人数一覧表はステージや機 器の面積を小さく見積もって計算しているものが多いため、 会場の実面積と、できれば実際の図面を作成して収容人数 を検証する必要があります。
  • 天井高:同じ部屋でも天井の高いところと低いところがあり うるので、それぞれの天井高を確認します。機材を搬入す るための入り口の縦横高さの確認も重要です。
  • 電源:コンセント位置、タイプ、電源容量のチェックを行い ます。
  • 施設の照明タイプ・音響システムと操作方法
  • 搬入口・搬入方法
  • 壁:会場の壁にどれくらいの遮音性があるかという点も事 前に確認しておく必要があります。一見、厚みのある壁に 見えても、空洞のため遮音性が低いこともあります。  この分野における技術は日進月歩ですが、基本的な見積書 の構成要素は下記のとおりです。
  • 音響:マイクなどの音源(input source)、音源をスイッチ ング操作するためのミキサー(mixer)、音声を拡大して聴 衆に届けるためのスピーカー(speaker/output devices)の 3つから構成されます。
  • 映像:コンピューター・タブレットやカメラなどの映像ソー ス、ソースを切り替えるためのスイッチャー、プロジェク ターなど映像を鮮明に見せるための出力デバイスの3つか ら構成されます。カメラを使用する場合、プロジェクター に映し出すことだけが目的の場合と、収録して映像を残す 場合では使用する機材のスペックが異なりますので、見積 を依頼する場合には明示することが望ましいです。
  • 照明:舞台照明にはさまざまな種類があります。しかしな がら、日本国内で使用されている用語とCICの統一用語に は若干のずれがあるようです。CMP受験を考えている方は、 CIC用語をひととおり覚える必要があります。
  • 舞台装飾:施工物や舞台そのもの、ドレープなどを指しま す。ドレープというのは黒いベルベットの布のことで、機 材の台やコード、背後の壁面を隠すために使用します。
  • 人員:アメリカなど労働組合の強い国でイベントを開催す る場合には、所定の勤務時間・休憩時間などに留意する必 要があります。また、施設によって独自のルールを設けて いる場合が多いため、外部調達した人員と施設の人員をう まく組み合わせるという工夫も必要です。
  • 運搬および諸費用:機材運搬や保管のための費用のほか、 駐車料金、スタッフ交通費・宿泊料金、食費などを合わせ ると、かなり大きな金額になります。このため、イベント ごとに必要な項目をつど精査することで、不要な出費は抑 えたいところです。

機材の発注

Sub skill 18.02 – Acquire Staging and Technical Equipment

さて、機材を発注するにあたっては  RFP(Request forProposals:見積・提案依頼書)を出すことになります。基本的な内容としては、想定会場・セットアップ形式、おおまかなプログラム・タイムテーブル、発注者の連絡先や連絡方法、提出締切といった情報が必要です。可能であれば会場図面や関連情報も併せて提供します。複数のサプライヤーにRFPを出すと、おそらくそれぞれから細かな質問が来ると思います。不明点を明らかにして、各社の見積条件に認識のずれがないかどうかを精査したうえで、価格・提案内容を総合的に検討して発注先を決定します。こうしたRFPのやりとりはプランナーにとって非常に貴重な学習の機会でもあるので、追加発注による予算オーバーを避けるためにも、このプロセスはぜひ、面倒がらずに時間をかけて、丁寧に進めてください。
CIC 9th manual P201~ 203では音響機器、ビデオ、照明、スタッフ、ウェブキャスト、ハイブリッド・ミーティングそれぞれのRFPを出す際の注意事項がまとめられています。紙面の関係上、ここですべてを紹介することはできませんが、実際にRFPを出す予定のある方、CMP受験をお考えの方は、ぜひご一読ください。また、日本の一般的な書式とは異なりますが、RFPのサンプルもConvention Industry Councilのウェブサイトで見ることができます。

Sub skill 18.03 – Install Staging and Technical Equipment

運営用のタイムテーブルを準備する際、機材の搬入・設営時間を設けることを忘れないでください。撤去についても同様です。事前にサプライヤーおよび施設と話し合い、段取りを決めておきましょう。また、梱包資材などを保管するための保管場所を確保しておくことも重要です。専用の部屋を設けたり、通路や会場の一角にパーテーションを置くこともあります。消防法が関わるため、保管場所の設置に当たっては設備の担当者と相談が必要です。
設営の際にはその進捗が把握できるように、設営担当者の連絡先を把握しておいてください。設営が完了したら、ひととおり会場を点検して設営具合をチェックします。イベントの参加者になったつもりで、その導線を歩いてみるとよいでしょう。

プロダクション工程管理

Sub skill 18.04 – Oversee Technical Production Operation

イベントの規模や内容に応じて、そのステージ・プロダクションにはさまざまな役割があります。見積書ではよく「技術要員」(英語ではengineer)という記載がありますが、特に一定の資格があるわけではないため、サプライヤーによってその技術・経験レベルはまちまちです。サプライヤーはプランナーとの連絡窓口となる担当者(project manager)を置くため、すべてのやりとりはこの担当者を通じて行います。さらにイベントの規模に応じてプロデューサー、テクニカル・ディレクター、ステージマネージャーなどといった役割を持つ人も出てきます。
開会式などのセレモニーがある場合は、かならずリハーサルの時間を設けてください。出演者自身が出席できない場合も代理を立てて、ひととおり映像・音響・照明などのtechrehearsalを行います。念には念を入れて準備したとしてもハプニングが起こるのがイベントです。あらかじめ指示命令系統を明確に決めておき、スタッフを信頼して、想定外の問題が起きても冷静に対応できるようにしておきましょう。

 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    Hybrid event ---------- オンライン・オフライン共存型イベント

    Virtual event ---------- オンライン上のイベント

    Request for proposals ---------- 見積提案依頼書

    Tech rehearsal ---------- 映像音響などの確認も含めたリハーサル

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