2017.01.10
国際資格CMPのコラム第22弾「DESIGN SITE LAYOUT」
当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第22弾です。今回は会場内レイアウトに関してです。レイアウトを決めるうえでは、イベントの最終目的、プロファイル(概略)、予算、過去の開催データなどを考慮に入れて検討する方法を学びます。
CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。
SKILL 21: DESIGN SITE LAYOUT
Sub skill 21.01 – Design Site Layout
CMP出題頻度:3~ 5問(合計150問)
今月は会場内レイアウトに関して解説します。レイアウトを決めるうえでは、イベントの最終目的、プロファイル(概略)、予算、過去の開催データなどを考慮に入れて検討してください。このうち過去の開催データは重要ですが、同じイベントでも内容や構成が徐々に変化しますので、ただ単に過去の事例を踏襲するのではなく、つど要求事項を明らかにする必要があります。
Sub skill 21.01 – Design Site Layout
まずはレイアウトの基礎となる会場図面を入手します。部屋の大きさやパーテーションの位置などを示す基本データです。会場図面は映像機材や施工など、各種サプライヤーと共有します。
次に参加者のプロファイル、特に障害者対応が必要であるかどうかを確認します。イギリスのEquality Act 2010 、アメリカのAmericans with Disabilities Act(以下ADA)などで見られるように、イベントにおける障害者対応が法制化されている国もあります。たとえばADAでは、障害を持つ人が健常者と同等の機会を得られることを目的として、宿泊施設におけるガイドラインを設定しています。こうした国ではしかるべき手続きを踏むことが重要になるため、プランナーとしては開催地域の法規制を事前に理解しておくことが重要です。法規制がない国であっても、障害者への適切な配慮が必要であることは言うまでもありません。
その他の検討要素
- 言語対応(同時通訳の有無)
- 参加者の求めるサービス(インターネットカフェ、携帯電話充電)
- 参加者にとってなじみのある会場かどうか(看板数の増減)
- 参加者の交通手段(シャトル発着場所の確保)
- 毎朝の会場到着時間の傾向(早ければ待機スペースを設ける)
イベントのコンセプトやプログラム内容も、会場レイアウトに大きな影響を与えます。ネットワーキングを目的としたイベントなら、セッションの合間に利用できるラウンジエリアを多めに確保する必要があります。併設展示会がある場合は、会場レイアウトは展示会場も含めた全体像をとらえて検討する必要があります。たとえば展示会場が商談しやすいかどうか、楽しめるかどうかといった要素は、翌日の再訪を左右します。
その他の検討要素
- 社交行事(social functions)
- スタッフ控室(staff office)
- スピーカー控室(speaker ready room)
- プレス控室(press room)
- 施錠可能な倉庫が必要かどうか
- イベントITテクノロジー
- 休憩時間の長さ
ニーズとウォンツを分けて考えることも重要です。最低限必要な要素がニーズ、装飾などの付加価値はウォンツです。まずは会場レイアウトをデザインするうえでのすべての要素をリストアップして、ニーズとウォンツに分け、予算制約などと併せて絞り込むのがよいでしょう。
初めて使用する会場のレイアウトを検討する場合、視察は欠かすことができません。1回目の視察は会場選定のためですが、決定後、2回目の視察には映像・施工などサプライヤーも同行してもらいます。どうしても視察ができない場合は会場図面や写真などを取り寄せますが、会場によってはバーチャルツアーを提供しているケースもあります。クルーズ船を使用する場合は、船種ごとにレイアウトが共通しているため、同じレイアウトのクルーズ船を視察するということもありえます。
視察時チェックポイント例
- 壁や柱などの基本設備(permanent structures)、テントや演台などの付帯設備(temporary structures)、テーブルや椅子などの什器(furnishings)を示すフロアプランを入手もしくは作成する。
- 会議施設のサステナビリティ取り組み関連資料(電気、廃棄物、水など)
- アクセシビリティ(障害者配慮など)
- 会議施設の提供サービス(礼拝室、クローク、ビジネスセンター、食事エリアなど)
- 床面の耐加重
- アレルギー誘因となるフラワーアレンジメントがないか
- 増築・改修工事部分がないか(将来計画も含め)
- 既設誘導サイン
会場レイアウトは消防法(fire codes)に準拠している必要があります。たとえば部屋ごとの収容人数、備品の配置なども消防法に影響します。指定施工業者が地元の消防署に申請を行うケースが多いようです。
会議をプランニングする際に必ず作成するのが会場プラン(site plan)です。常設・仮設すべての要素を盛り込んだもので、通常は施工業者などに依頼してCADで作成してもらうか、専用ソフトで作成するケースもあります。いずれにしても、縮尺をきちんと取らなければ、予定していた備品が設置できなかったということにもなりかねません。会場に催事担当者(CSM: convention service manager)がいる場合は、会場プランの作成段階から関わってもらうようにしましょう。
セッション会場の割り振りにあたっては、収容人数一覧表(capacity charts)と、セッションごとの想定参加者人数をもとに配置します。各会場にはステージや映像音響機器が入ることを忘れないでください。順番としては、まず参加者数の多いセッションから当てはめていくのが原則です。まだセッション内訳が決まっていない場合は、まず総会など全員が入場するメイン会場、展示エリア、社交行事エリアの3つを確定してください。(会場選定時に決めているケースも多いと思います。)そのうえで、参加登録エリアやクロークなど、残りの要素を割り振っていきます。 配置の際に決め手となるのは、それぞれの会場が、そのイベントにおいてどのような役割・機能を持っているかです。運営本部を例に挙げると、なるべく人通りのないエリアに配置してスタッフ休憩所としての機能を持たせるケース、なるべく人通りの多いエリアに配置して参加者の問合せ先とするケースの2通りがあります。スピーカー控室は講演会場のなるべく近くに配置することで講演前・講演中のアクセスが容易になる一方、VIP控室は静かな場所に配置することでプライバシーを確保します。
展示エリアのレイアウトについては会議エリアとは別のルールがあるため、単独で作成します。展示ブース、飲食エリア、展示事務局、インターネットカフェなどを含めるとともに、通路の幅を明示する必要があります。
会場レイアウト作成にあたっては、群衆管理についても想定しておく必要があります。たとえば、総会会場前のホワイエは広々としていて、一見、参加登録エリアに最適であるように見えます。しかしそんなことをすると、参加登録の行列が総会会場への入場を妨げるというトラブルを引き起こします。常に、群衆の動きをイメージしながら配置する必要があるのです。
会場レイアウトが完成したら、次はサインプラン(看板の一覧と配置図)です。適切なサインプランを作成するためには、自分自身が参加者になったつもりで会場を歩いてみるのがよいでしょう。サステナビリティの観点から、もし会場にデジタルサイネージのシステムやイーゼルがあれば、まずはそちらから使用してください。(イーゼルというのは絵を描くときに使用する台のことですが、看板のパネル部分だけを作ればよいこと、繰り返し使用できることから、欧米では看板スタンドの代用品として広く使用されています。)
会議運営には変更がつきものです。たとえば人気セッションが満室で観客があふれてしまった場合のために、あらかじめ中継室(overflow room)を用意しておくことを検討してください。もしメインホールを総会にしか使用しないなら、総会以外の時間帯はメインホールを中継室に割り当てることもひとつの方法です。また、会場後方に追加で並べられるよう椅子を用意しておくこともあります。万が一の対応策:コンティンジェンシー・プラン(contingency plan)を用意しておきましょう。
また、会場プランが完成したら、会場担当者や映像機材担当者はもちろんのこと、なるべく多くの関係者にチェックしてもらいましょう。案外、意外な人から絶妙なアイデアが引き出せたりするものです。そして変更が生じた場合には、必ずコアメンバーにフィードバックしましょう。会期当日にレイアウト変更が生じてしまうケースもありますが、この場合も「誰にその変更を伝えなければならないか」を明確にしてください。
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押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)
Attendee profile ---------- 参加者プロファイル(属性)
Convention services manager ---------- 催事担当者、CSM
Event profile ---------- イベント概要
Floor plan ---------- フロアプラン
EGeneral services contractor (GSC) ---------- 指定サービス会社
Program design ---------- プログラムデザイン
Simultaneous interpretation ---------- 同時通訳
Site inspection ---------- 会場視察料
Site plan ---------- 会場プラン
Traffic flow ---------- 参加者導線