コラム

2017.02.10

国際資格CMPのコラム第23弾「MANAGE MEETING OR EVENT SITE」


当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第23弾です。今回は、イベントの会場設営や撤去、運営中の会場管理などについて学びます。CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。

SKILL 22: MANAGE MEETING OR EVENT SITE
Sub skill 22.01 – Create Logistics Action Plan for Site Set-Up and Take-Down
Sub skill 22.02 – Set Up Site
Sub skill 22.03 – Monitor Site During Meeting or Event
Sub skill 22.04 – Dismantle Site

CMP出題頻度:4~ 6問(合計150問)


イベントの当日運営では、その過程で発生するさまざまな問題を解決するために、プランナーもさまざまな役割を果たす必要があります。経験を積んだプランナーほど早くから準備を始める傾向があります。これは、発生する可能性のある問題点を洗い出し、それぞれの問題点に備えるためです。

ロジ計画の作成

Sub skill 22.01 – Create Logistics Action Plan for Site Set-Up and Take-Down

当日運営のためのロジ計画を立てるにあたり、いちばん最初に必要となる情報は「会場を利用することのできる借り上げ期間」です。イベント本番だけでなく、設営や撤去もこの期間内に収める必要があります。時間が足りないから延長しようとしても、前後にはすでに別の催事主催者が予約を入れているため延長できない場合が多いので要注意です。会場予約の際には、設営・撤去にかかる時間をきちんと見積もったうえで、借り上げ日程を決めるようにしてください。 借り上げ日程が決まったらESG(event specification guide)の作成をはじめます。会期前・会期中・会期後にわたり、運営用タイムテーブルにイベントの主要な機能や活動などを入れ込んでいきます。ESGは巨大なパズルのようなもので、すべてのピースを正しく計画だてて配置することによって、イベントがスムーズに進行するのです。
ESGに盛り込む情報は、参加者に配布するアジェンダの情報とは異なります。アジェンダにはプログラムの内容を、ESGにはプログラムを運営するための情報を盛り込みます。また、ESGには運営用タイムテーブルのほか、フロアプラン・レイアウト、設営内容、展示会場レイアウト、スタッフそれぞれの役割を示した体制表、サステナビリティへの取り組み、セキュリティ情報なども盛り込みます。
イベントでは通常、複数のチーム・サプライヤーが協働することになりますが、たとえばテーブルリネンセッティングが始まるまでにテーブルの設置を終える、設営作業が始まるまでにリサイクル回収ボックスを設置するなど(設営時と撤去時には大量のごみが発生するため)、段取りを決めておくことも重要です。
設営部分の段取りが確定したら、次はイベントの中身をESGに合わせる作業です。各セッションの長さやスピーカーの持ち時間、休憩時間やリハーサルなどもESGに従って決めていきましょう。また、セキュリティ情報についても、警備員の配置や認証手続きなどをESGに追加しておきます。 人や物の流れをスムーズに管理するにあたり、ESGのすべての項目は、時間(time)・利用できるかどうか(availability)・コスト(cost)のバランスをとる必要があります。ESGが出来上がったら、関係する各部門のスタッフに見てもらい、フィードバックを受けてください。また、ESGの修正はプランナーが自分自身で行うことにより、情報を一元化することも重要です。

会場設営

Sub skill 22.02 – Set Up Site

会場設営にあたっては、各サプライヤーの搬入時間や、搬入に必要な設備・条件を整理して、会場担当者・警備担当者と共有する必要があります。また、会場ごとのルールや料金設定を確認しておきましょう。北米の場合だと、コンベンションセンターなど大きな施設では搬入物引受料(materialhandling fee)や保管料(storage charge)を加算するところが多いようです。
搬入物が届き始めたら、所定のスケジュールに従って搬入を行います。スケジュールにはある程度のゆとりを持たせておくことも重要です。ちなみにこれは講演者のためのリハーサルでも同様で、たとえ本人がリハーサルは必要ないと言ったとしても、運営側としてはリハーサル時間を確保しておいたほうが得策です。講演者抜きでも映像・音響のみのリハーサルを行うことで万全を期すことができるからです。

会期中の会場管理

Sub skill 22.03 – Monitor Site During Meeting or Event

イベント本番が始まったら、プランナーは各部門・各サプライヤーと密に連絡を取り合い、イベントがESGどおりに進んでいるかをモニタリングします。ESGには関係者の連絡先一覧を載せておき、仮設電話の番号なども随時アップデートします。想定外のアクシデントが発生した場合も、「必要な時に必要な人にすぐコンタクトできること」、これでずいぶんストレスが減りますし、すぐにもとの軌道に戻すことができます。
なお、会期中、プランナーはさまざまな判断を要求されることになります。ESGの内容と進行フローをしっかり頭に入れて、適切な対応ができるように準備しておいてください。

会場撤去

Sub skill 22.04 – Dismantle Site

無事にイベントが終了した後も、すべての人や物が会場を出るまでESGのモニタリングは続きます。荷捌き場が使用できる状態になっているか、廃棄物の処理は適切に行われているか。さらに会期終了後はスタッフの疲労がたまっているため、ずさんな仕事をしたり、思わぬ事故が起こるという可能性もあるのです。このため、充分な撤去時間を設けておくことも大切です。
廃棄物の処理にあたっては、安全かつ環境に配慮した方法で行います。サプライヤーが適切な処理を行っているかどうかも確認します。事前に調べておくと、資材の種類によって寄付を受け付けている団体が見つかることもありますので、ぜひ廃棄だけでなくリユースも視野に入れて検討してください。
危険物の処理は法律に準拠した方法で行います。欧米では余り食材をシェルターに寄付することもありますが、これは開催地の法律や安全基準に照らし合わせて行う必要があります(日本では現状、英米法のgood Samaritan lawに相当する法律がないため、たとえば食中毒が発生した場合は責任が発生します。このため、一般的に余り食材の寄付は行われていません)。
海外でイベントを開催した場合は、撤去後に搬出物を送り返す作業を行う必要があります。国を超えて貨物を送る場合は、その中身や大きさ、重さ、価格などを記した書類(proforma invoice)などを用意する必要があり、これは貨物にとってのパスポートのようなものだと考えてください。通関にあたっては国によってさまざまな書類や手続きが必要になるため、フォワーダーや通関業者に依頼するのが確実です(フォワーダーには通関業者を兼ねているものとそうでないものがあります)。
国によっては持ち込みが制限されている品目があったり、法律によってさまざまな書類を用意する必要があります。フォワーダーに相談しながらこれらの書類を揃えて、荷受けをするスタッフ全員にコピー一式を渡しておきます。
通関を容易にするものとしてATAカルネが挙げられます。これはATA条約(物品の一時輸入のための通関手帳に関する条約)に基づき、展示会への出品物などの物品を外国へ一時的に持ち込む場合、外国の税関で免税扱いの一時輸入通関が手軽にできる通関手帳です。 輸入税の支払いや保証金の提供が不要となる支払保証書でもあります。現在75か国で使用が認められているため、通関手続きの異なる数か国の税関で使用できるメリットがあります。
推奨すべきものではありませんが、国と状況によっては通関時にEx gratia paymentつまり袖の下が必要になることもあるそうです。こうした経費を会計上では婉曲表現としてeasementsやsubventionsと表記します。Ex gratia paymentを検討せざるを得ない場合は、あらかじめ所属団体の倫理コードや自国および相手国の法律を確認しておく必要があります。また、チャリティへの寄付という形をとることもあるそうです。

 
  • 押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)

    ATA carnet ---------- ATAカルネ

    Cost, insurance, freight (CIF) ---------- 運賃保険料込み条件

    Customs broker ---------- 通関業者、乙仲

    Event specifications guide (ESG) ---------- ESG

    Ex gratia payment ---------- 報賞金

    Freight forwarding company ---------- フォワーダー

    Logistic action plan ---------- ロジ計画

    Material handling fee ---------- 搬入物引受料

    Pro forma invoice ---------- プロフォーマ・インボイス、見積送り状

    Temporary import bond ---------- Temporary import bond

    Temporary import license ---------- Temporary import license

    U.S. export license ---------- 米国輸出ライセンス

    Value-added tax (VAT) ---------- 付加価値税

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