2017.04.10
国際資格CMPのコラム第25弾「MANAGE MARKETING PLAN」
当社社員がお送りする、ミーティングプランナーの国際資格(CMP)をテーマにした「MICE Japan」の連載第25弾です。イベントにおけるマーケティングの成功とはなんでしょうか。多くの場合は参加者動員数が指標とされていますが、参加者の質、イベント収支への貢献、主催団体のブランド向上といった観点も重要です。今回は、イベントのマーケティングについて学びます。
CMP(Certified Meeting Professional)は、約2万団体・10万名が属する世界最大のMICE産業団体Convention Industry Councilが認証する、ミーティングプランナーの国際資格です。
SKILL 24: MANAGE MARKETING PLAN
Sub Skill 24.01 - Conduct Situational Analysis
Sub Skill 24.02 - Define Target Market Segments
Sub Skill 24.03 - Select Marketing Distribution Channels
Sub Skill 24.04 - Implement Marketing Plan
CMP出題頻度:4~ 6問(合計150問)
イベントにおけるマーケティングの成功とはなんでしょうか。多くの場合は参加者動員数が指標とされていますが、参加者の質、イベント収支への貢献、主催団体のブランド向上といった観点も重要です。また、イベントのマーケティングは、主催団体のマーケティング戦略およびブランド価値と連動している必要があります。
また、イベントの成果はマーケティングの内容(特にテクノロジーと人的資源)で大きな差が出るため、戦略を立てることが重要です。
状況分析
Sub Skill 24.01 - Conduct Situational Analysis
マーケティング活動におけるアクションプランを立てるにあたっては、まず状況分析を行います。たとえば製品の販売促進を目的としたイベントなら、競合社の有無や製品の差別化要因、競合社の販促イベント実施状況、自社がこれまでに実施した販促イベントでのアンケート結果や各種データなど、外部要因・内部要因、そして過去から現在のデータを集めます。
ステークホルダーからのヒアリングを行うことで、さらに深みのある情報が得られます。また、こうしたヒアリングを通じて連携や信頼感が深まるという利点もあります。新しくイベントを立ち上げる場合は、ターゲット層に対する意向調査を行うことで、参加促進プロモーションにつなげるというのもよく見られる手法です。 集まった情報をもとにSWOT分析を行ってみるのもよいでしょう。内部要因(Strength, Weakness)、外部要因(Opportunities, Threats)を整理することで、イベントの置かれたポジションが見えてきます。
また、イベントのマーケティングは常にロジスティクスと連動する必要があるため、こうした分析データはロジ担当チームなど幅広いステークホルダーと共有できるようにしておくことが求められます。
参加促進に向けたマーケットセグメンテーション
Sub Skill 24.02 - Define Target Market Segments
マーケットセグメンテーションというのはマーケティング戦略のひとつで、対象となるマーケットをその属性に応じて細分化することです。これをイベントに当てはめると、参加促進の対象となる人々をいくつかのタイプに分けて、それぞれに適したプロモーションを行っていくための分析ということになります。
一般的なセグメンテーションでは、ジオグラフィック(地理的変数)、デモグラフィック(人口統計分布)、サイコグラフィック(心理的変数)および行動変数を用いてグループ分けを行います。このうち、イベントの参加促進を目的とする場合は、主にサイコグラフィックとデモグラフィックを使用します。
サイコグラフィックというのは対象者の価値観や興味、ライフスタイルなどを指します。このデータを集めるためには、アンケートを実施することが一般的です。また、デモグラフィックは対象者の年齢、性別、家族構成、教育レベル、組織内のポジションなどといった属性を指します。
参加促進にあたって重要なのは、その対象者が組織内で持つ意思決定レベルです。B2Cイベントであれば個人の意向がそのまま反映されますが、B2Bイベントであれば組織内の複数の人々による意思決定プロセスがあるからです。このため、組織内の承認に必要となるような情報をまとめた“Whyattend”という資料をまとめ、参加促進ツールとしている事例は欧米で特によく見かけます。
ところで参加促進を考えるうえで重要なのはソーシャルメディアによる口コミ効果やインフルエンサーの存在です。かつて製造業の大量生産を前提としていた時代のマーケティングであれば、いかにその商品が革新的で優れているかということを生産者から消費者に一方的に伝えていればよかったのですが、製品やサービスが多様化して顧客セグメンテーションが細かく分かれることで生産者は消費者から製品に対する要望やフィードバックを細かくフォローすることが重要となり、さらにソーシャルメディアの発達で顧客同士の口コミというものもマーケティングにおける重要な要素となりました。
デモグラフィックとサイコグラフィックによるセグメンテーションを終えたら、次はそれぞれの属性ごとに、現在と将来のニーズを分析します。アンケートを行うのが一般的ですが、「イベントについてどういうニーズがあるか」という設問だと本人が気づいていないニーズを掘り起こせないので、「イベント参加によって達成したい目的」に関する設問を設定するほうがよいようです。
マーケティング手段の選択
Sub Skill 24.03 - Select Marketing Distribution Channels
CICのテキスト原文では、この章はmarketing distributionchannelsと い うタ イト ル に な っ て い ま す。Distributionchannels(流通チャネル)というのは製品を生産拠点から消費者に届けるための経路のことなので、「マーケティングの流通チャネル」という意味合いで使用しているのだと思いますが、ややわかりづらいので「マーケティング手段」と意訳しました。
イベントにおけるマーケティング手段には広告やダイレクトマーケティング、オンラインコミュニケーションがあり、それぞれにさまざまな手法があります。合理的な選択方法としては、過去に実施して効果があった手法を2つ、初めて試す手法を1つ、合計3つの手段を用いてマーケティングを行うこと、そしてそれぞれの費用対効果を検証することを勧めています。テキストに記載されている手法には下記のようなものがあります。
- 新聞・雑誌広告
- テレビ・ラジオ広告
- ビルボード(屋外広告)
- その他広告全般
- 手紙やメールによるダイレクトマーケティング
- テレマーケティング
- Eメールマーケティング
- ソーシャルメディア
さらに国際的なイベントの場合は、文化や習慣の違い、国地域ごとの政治事情や法律、言語、受け取り方の違い、時差、距離などにも幅広く配慮する必要があります。また、実施するのがバーチャルイベントもしくはハイブリッドイベントの場合、想定参加者をきちんと絞り込んだうえで、主にEメールによるマーケティングを行う必要があります。
マーケティングプランの実行
Sub Skill 24.04 - Implement Marketing Plan
マーケティングプランの実行に至るまでは膨大な調査と分析が必要になります。ステップとしては今回のサブスキルの順番通りで、(1)状況分析、(2)セグメンテーション、(3)マーケット手段の選択、(4)マーケティングプランの実行という流れです。
マーケティングプランの実行にあたっては、あらかじめスケジュール表を作成して臨んでください。週ごとのサンプルプランがCICテキストP260に掲載されています。年1回開催されるイベントであれば、52週間前の前回大会にはマーケティングを始めなければなりません。そしてここでも、ロジスティクス面での準備と足並みを合わせていく必要があります。また、複数のマーケティング手段を用いる場合は、それぞれバラバラに進めるのではなく、統合して進める必要があることは言うまでもありません。
ミーティング産業の記念日
Global Meeting Industry Day
Global Meeting Industry Dayをご存知ですか?毎年4月6日はミーティング産業の記念日として、“Meetings MeanBusiness”というスローガンのもと、全世界の産業団体や企業がミーティング産業の啓蒙活動を実施しています。今年は全世界で53件の記念イベントが行われるほか、団体ごとの集合写真を#GMID17アカウントに投稿して盛り上げようということになっています。みなさんもぜひご参加ください!
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押さえておきましょう! CMP用語集(terminology)
Demographics ---------- 外デモグラフィック(人口統計分布)
Psychographics ---------- サイコグラフィック(心理的変数)
SWOT analysis ---------- SWOT分析