コラム

2024.03.05

MICE(マイス)とは?意味やメリット、施設等を事例付きでわかりやすく解説


「ウィズコロナ」が終わり「アフターコロナ」へと社会が転換するなか、人々の移動と対面コミュニケーションが再開し、観光・インバウンドやイベント産業に大きな注目が集まっています。その中でよく耳にする言葉が「MICE」です。

本稿では、半世紀以上にわたりMICEに携わってきたJCS(日本コンベンションサービス)が、MICEの定義や具体的な事例を解説するとともに、MICEを開催することによってどのような「経済効果」や「ビジネスチャンス」が生まれるのか、わかりやすく解説します。

MICEとは?

MICE(マイス)とは、Meeting(企業会議・研修)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention(政府主催会議・学術会議・業界会議)、ExhibitionまたはEvent(展示会・見本市・イベント)の頭4文字から成る造語で、産官学の各組織が、ビジネスや政治、学問的なテーマのもとに開催する、ビジネスイベントの総称です。

MICEは、企業活動や研究・学会活動等と関連している場合が多いため、開催地域への集客がもたらす経済効果や観光振興の側面だけでなく、ビジネスチャンスやイノベーションの創出を促したり、都市の知名度やブランドイメージを上げたりするなど、様々な波及効果が期待できます。そのため世界の国や地域が、積極的にMICEの誘致・開催に取り組んでいます。

  • Meeting:主に企業が、目的に応じて関係者を集めて行う会議、研修、セミナー。

    Incentive Travel:企業が、従業員や代理店などの関係者に対して、成績優秀者の表彰や研修、顧客の招待などを目的に行う報奨旅行や研修旅行。

    Convention:政府、国際機関、自治体、学術団体、産業団体、企業などが開催する、大規模な国際会議。

    Exhibition/Event:政府、国際機関、自治体、学術団体、業界団体、企業などが開催する、大小さまざまな展示会、見本市、博覧会、イベント。

MICEの具体例

MICE市場には、具体的にどのような事例があるのか、M・I・C・Eそれぞれを解説します。

Meeting(ミーティング)

主に企業が行う様々な形態のミーティングを指し、セミナーや研修、役員会議、内定式、入社式、周年行事などが該当します。具体的な例としては、海外投資家向け金融セミナーや、グループ企業の役員会議、外資系企業のキックオフミーティングなど、企業主催の会議などが挙げられます。

Incentive Travel(インセンティブ トラベル)

企業が従業員や代理店といった関係者の為の表彰や研修などを目的に実施する、報奨・研修旅行を指します。日本では、成績優秀な社員の功労をたたえる際、「体験企画」や「コト消費」を好む傾向が強く、体験の共有によって自社への愛着心や、業務へのモチベーションアップ等を狙う目的があります。

海外では、報酬として旅行を贈る取り組みが浸透しており、旅程の中には会議や会合、工場見学などが組み込まれることもあります。私たちJCSが手がけた事例では、FIFAワールドカップ「ホスピタリティ・プログラム」を活用した報奨旅行などがあります。

Convention(コンベンション)

政府、国際機関、自治体、学術団体、産業団体、企業などが開催する、大規模な国際会議です。首脳会談やサミット等は「政府系の国際会議」に該当します。

また医学や歯学、薬学、工学、教育など、各分野の学会・研究機関に属するメンバーが定期的に集まり、人的交流や研究発表を行う学術大会・集会・総会や、産業団体が主体となって各国の業界動向を把握し、今後の技術革新や業界の発展を目的とするものもあり、世界中から3,000名以上が参加する大規模な国際会議になることもあります。

Exhibition / Event(エキシビション / イベント)

政府、国際機関、自治体、学術団体、産業団体、企業などが開催する、展示会、見本市、博覧会やスポーツ・文化のイベントです。展示会、見本市は毎年定期的に同じ場所(展示施設)で行われることが多く、コンベンションやカンファレンスに付随する形で開催される展示会もあります。

MICEの開催場所

国・地域

国・地域の選定は、MICEを成功に導くための重要な要素です。開催内容に関連した歴史や名所があるか、参加者が来場しやすいか、必要な設備・条件が備わっている会場があるかなどが、主な判断材料になります。開催地域への経済波及効果は大きく、MICE参加者1人当たりの「消費支出」は、一般の観光旅行者よりも多いと算出されています。よって、開催条件を整えてMICEの誘致活動に力を入れている国や都市が増えています。

オンラインイベント/ハイブリッドイベント

新型コロナウイルスの影響を受けて近年急速に増加したのが、オンラインイベントやハイブリッドイベントです。

オンラインイベントとは、参加者が会場に集まるのではなく、動画配信などの手段でイベントに参加する開催形態を指します。また、ハイブリッドイベントとは、リアルの会場とオンラインのどちらでも参加できるイベント開催形態のことです。動画を配信する場合には、ライブ中継だけでなく、イベントの録画映像を事後視聴できるオンデマンド配信を行うこともあります。

オンラインで参加できるこれらの開催形態には、感染症への対策という側面だけでなく、遠方にいる人でも参加しやすい、自宅やオフィスから参加できる、オンデマンド配信なら参加者それぞれが好きな時間に見られる、といったメリットがあります。一方で、参加者同士が直接顔を合わせるリアルイベントとはコミュニケーションの取り方や効果が異なる部分もあるため、イベントを開催する際には目的に合った開催形態を選ぶことが重要です。

MICEを開催する目的やメリット

MICEの大きな特徴は、国内外の企業や学会から多くの関係者がそれぞれの目的に沿って参加し、一堂に会することです。MICEを開催・誘致することにより、次のような効果が期待できます。

新しいビジネスやイノベーションを創出

MICEの開催により、ビジネスや学問的な知見の集積、人的ネットワークの構築が行われることで、主催者だけでなく、開催国にとっても新しいビジネスやイノベーションを生み出す機会を作ることができます。さらに、報道機関によるメディアへの露出が期待できるので、開催国・地域にとっては認知拡大の効果が期待できます。

国・地域への経済効果

MICEを開催すると、国内外から多くの参加者が会場・地域に集まるので、主催する団体や企業のみならず、直接的、間接的に関連企業や団体、そして開催地域に大きな経済効果を生み出します。たとえば会場近辺の交通機関、宿泊施設、レストラン、イベント開催に必要な商品の購入やレンタル(飲食、機材、備品等)などの需要が発生します。

2019年ラグビーワールドカップでは、観戦目的で訪日した外国人は一般の訪日客に比べ滞在日数が長い上、滞在中、試合と試合の合間の日程で旅行をするので、交通、宿泊、飲食など、様々な業種に大きな経済波及効果を生んでいます。

国・都市の競争力向上

MICE開催による成功実績ができると、国や都市では、イベント誘致への期待が高まり、誘致のために様々な施策を打ち出します。それにより競争力が高まり、結果として地域ビジネスの発展へとつながっていきます。

その成功例として有名なのがアメリカ、ラスベガス市です。ラスベガスと聞くとカジノやギャンブルをイメージされる方が多いかもしれませんが、ラスベガスは大型コンベンションや、毎年恒例となっている専門見本市が開催されるなど、世界的に有名な都市となるまでに成長し、地域の経済発展に貢献しています。

MICEにおける日本の現状とポテンシャル

イベントを主催している企業・団体のみならず、イベントを開催している地域にも経済効果を与えるMICEビジネスですが、日本国内では、どのように活用されているのでしょうか。

政府・観光庁のMICEへの取り組み

日本政府が2023年3月に定めた「観光立国推進基本計画」では、経済効果やビジネス機会・イノベーションの創出、国や開催地のブランド力等の向上などの観点から、MICE の日本への誘致・開催を強化するとしています。その具体的目標としてアジア主要国における国際会議の開催件数に占める日本開催の割合を2025年までにアジア1位(3割以上)にすることを目指しています。

また、国内の各地域において MICE 開催地としての国際的な競争力を高めるため、観光庁は次の12都市を「グローバル MICE 都市」として重点支援対象に定め、MICE 誘致に係る知見や取り組み等の意見を共有するほか、各都市との連携強化・支援を行っています。

  • 「グローバルMICE都市」 ※2021年4月時点

    • 札幌市
    • 仙台市
    • 東京都
    • 千葉県 千葉市
    • 横浜市
    • 愛知県 名古屋市
    • 大阪府 大阪市
    • 神戸市
    • 京都市
    • 広島市
    • 福岡市
    • 北九州市

日本のMICE開催状況と経済成長

ICCA(International Congress and Convention Association/国際会議協会)によると、国際会議の開催件数は、新型コロナウイルスによる一時的な減少を除けば、世界的に年々増加傾向にあります。

2022年の世界全体における国際会議開催件数は9,042件です。国別に見ると米国をトップに、多くの国際機関や学会の本部を抱えるヨーロッパ諸国が上位にきており、日本は228件で12位となっています。都市別に見ると東京が39件で41位にランクしていますが、1位のウィーンとは123件もの差があります。

観光庁が2018年に発表した統計によると、国際MICEによる総消費額は約5,384億円、経済波及効果は約1兆590億円と推計されています。これに伴う経済活動で生じた雇用創出効果は、国全体で約96,000人分、税収効果は約820億円と推計されました。

ユニークベニューに見るMICEの可能性

ユニークベニューは、会議やイベントを開催する会場としての歴史的建造物や文化施設を指し、そこで開催することで、特別感や歴史的・地域的な特性を演出することができるため、MICEを演出する独自性の高い戦略として、近年注目されています。
2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、各スポンサー企業のホスト会場として「Unique Venues of London(UVL)」に登録されたセント・ポール大聖堂やケンジントン宮殿などが会場に選ばれ、参加者を楽しませました。

ユニークベニューは、MICEにおけるパーティー会場として使われることが多く、世界文化遺産である京都の元離宮二条城はその先駆けです。尚、二条城をユニークベニューとして利用するには「世界遺産・二条城MICEプラン」事業のコーディネーターへ依頼する必要があります。JCSは同事業のコーディネーターに選定されておりますので、唯一無二・特別感のある空間での開催を検討されている主催者に効果的なプランニングを提案することができます。

MICEとサステナビリティ

MICE においてサステナビリティは近年ますます重要なテーマとなっています。MICE は本質的に、社会課題の解決に向けて話し合う場、解決策となるイノベーションを生み出す場です。国連が採択した2つの枠組み「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」とその目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成し持続可能な社会を実現するためには、世界が直面する課題について社会・経済・環境といった様々な視点から多くの人々が力を合わせて検討し、解決策を導き出していく必要があります。そのため、近年では SDGs に関連したテーマの MICE 開催が増加しています。

 
 

また、MICE は多くの人々の移動・宿泊や大規模な会場設営などを伴うため、イベント自体が環境や地域社会への負荷とならないように考慮する必要があります。そうしたマイナスの影響への対処に加え、近年では MICE 開催により社会システムの変革や市民啓発といった積極的なプラスの効果を残そうという「レガシー」の考え方も取り入れられるようになっています。サステナビリティに関しては国際的な基準作りも進んでおり、日本だけでなくグローバルな視点から取り組みを進めることが求められています。

【関連記事】MICE の力で、持続可能な社会の実現に貢献【関連記事】持続可能な観光を推進する国際的団体が取り組むMICE基準開発に参画

JCSが手掛けるMICE施設・サービス事例

JCSは、国際会議や学術集会、博覧会など、コンベンションにおける豊富な経験・実績を活かし、MICE施設の開発・企画・運営を手がけています。地域の観光情報を発信したり、街の回遊性を高めたり、さらには地域のプロモーション実施やイベント誘致を行うなど、幅広いソリューションを展開しています。
また、「MICE都市研究所」では、MICEに関わる調査・研究、教育・研修事業などのサービスを提供するため、様々な課題に対応することができます。

MICE施設

イベントを成功に導くためには、テーマに最適な会場や施設を選ぶことが不可欠です。JCSは2001年よりMICE施設や図書館運営・自治体からの業務委託などに対応するMICE・まちづくりの事業を開始し、2019年には公共施設の運営件数が30件を超え、指定管理者として関わる施設の事業件数は100件以上になりました。
この実績を活かし、地域への経済効果が高いMICE誘致や、地域経済を発展させる観光振興に寄与する仕組みづくりなど、専門性の高いサポートを行っています。

施設紹介と事例

  • 日比谷・虎ノ門エリアの「日比谷スカイカンファレンス」

    霞ケ関駅、内幸町駅から徒歩2分の「日比谷フォートタワー」11階日比谷スカイカンファレンスは、全3室、部屋面積326㎡、最大収容人数296人のカンファレンス施設です。天井高4.2m、南側の窓ガラスからは自然光が差し込み、虎ノ門・東京タワー方面を臨める開放感あふれる眺望が特徴です。専有の高速インターネット回線、高輝度9,000ルーメンの天吊りプロジェクターなど高品質な映像音響機器、ブルーを基調にした落ち着きのある内装インテリアを備え、セミナー、研修、採用イベント、オンライン配信会場から少人数の会議や懇親会まで、多様なビジネスイベントに対応します。
    【関連記事】虎ノ門・霞が関の当社直営カンファレンス施設「日比谷スカイカンファレンス」グランドオープン

     

    福岡の新たなビジネス発信拠点「DAIMYO CONFERENCE(大名カンファレンス)」

    2023年4月開業の大名カンファレンスは、大名小学校跡地に誕生した複合施設「福岡大名ガーデンシティ」内に位置しており、施設内には世界最高級の5つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」、緑豊かな3,000㎡の芝生広場もあり、これらと組み合わせて多彩なイベント開催が可能です。国際会議やエグゼクティブ会議にも最適な高級感あるしつらえと機能性を兼ね備えたボードルームなど用途に応じて選べる全9部屋で、福岡・九州のビジネス・カルチャーをアジア・世界へと届けるビジネス発信拠点として、皆さまのハレの場を成功に導きます。
    【関連記事】福岡・天神の当社直営カンファレンス施設「DAIMYO CONFERENCE」グランドオープン

     

    多摩地域最大規模のコンベンション施設「東京たま未来メッセ」

    京王八王子駅から徒歩約2分、JR八王子駅から徒歩約5分の場所に位置し、「多摩地域の持つ産業集積の強みを生かし、広域的な産業交流の中核機能を担うことにより、もって東京都における産業の振興を図る」ことを目的とした、約2,400㎡の展示室と、約50㎡~200㎡の7つの会議室を備える施設です。
    【関連記事】東京都多摩地区最大級の産業交流拠点「東京たま未来メッセ」が開業しました

     

    ※そのほか施設に関しては、こちらからご確認ください。

     

MICE調査・研究

MICEを開催するにあたり、必要な調査・研究の設計、実査、解析、調査結果に基づくコンサルティングを行い、お客様のプロジェクト内容に応じたサポートを実施します。

主な事例

  • 東京都政策企画局

    東京都知事部局の機関である、政策企画局のホームページのリニューアルと開発業務を受託いたしました。

     

    内閣府知的財産戦略推進事務局

    中国・九州地方にて、地域・社会と協働した「知財創造教育」に資する学習支援体制の調査を行いました。

【関連リンク】MICE都市研究所│調査・研究/豊富な実務経験と専門分野の知見をベースに

国際会議誘致

国際会議誘致を成功させる為には、実施運営提案、財務計画、危機管理、ロビーイングなど、高度な戦略と計画が必要です。JCSの豊富な経験と卓越した国際ネットワークで、勝てる戦略を提案します。

主な事例

  • 第17回 世界地震工学会議

    2021年9月27日~10月2日(6日間)、宮城県仙台市の仙台国際センターで開催されました。本会議は地震災害の軽減や地震防災対策について話し合う、地震工学分野では最大規模の国際会議です。76か国・地域から約3,000人が参加し、「災害後の復旧と復興」や「学際領域での国際的な協力を通じた減災」等をテーマに議論が行われました。日本ではこれまで、1960年(東京)、1988年(東京・京都)に開催され、今回は3回目の開催となります。
    【関連記事】両陛下がオンラインで臨席された「世界地震工学会議」の運営を担当

     

【関連リンク】MICE都市研究所│国際会議誘致/誘致活動は、intelligentな戦いです

教育・研修プログラム

JCSは、企業、団体や社会人、小学校から大学までの教育機関を対象に、MICEという専門的な知識と戦略が要求される分野において、幅広い教育・研修プログラムをご提供します。
一般的な講義はもちろん、お客様の課題を引き出し、その課題や必要性に焦点を当てカスタマイズされた教育・研修プログラムをご提案いたします。

主な事例

  • 大学生向けのMICE講座

    立教大学観光学部、東洋大学観光学部、横浜商科大学商学部にてMICEの基礎知識や今後のMICE活用の可能性について講義を行いました。

     

    各都市のコンベンションビューロー向け教育・研修

    MICEの戦略的な誘致・開催活動や開催地としての魅力の発信、他都市との差別化につながる観光コンテンツの開発が必要とされており、JCSは50年以上にわたるMICE誘致・運営の経験をもとに、都市の強みを生かした機能の強化やMICE人材育成の教育・研修などの支援を行っております。

     

まとめ:MICEに関するお問い合わせはJCSまで

MICEは、専門的な知識に基づいた高度な戦略を基に運営しなければ、会を成功に導くことができません。JCSは、半世紀以上にわたり、大型国際会議や学術集会の誘致・運営を行い、それに関連した地域活性化の取り組み、MICE施設の運営、MICEに関する教育・研修等を行ってきました。その蓄積されたデータとノウハウを活用して、お客様が理想とするMICEの実現へと導きます。

※この記事は2021年03月24日に公開した記事を再編集しています。

関連記事

【関連記事】MICEレガシーの創出 - G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合における地域住民のボランティア参加を事例に 【関連記事】ハイブリッドMICEの「体験価値」について対談!渋谷MICE協会セミナーでJCSが登壇

このカテゴリの記事

MORE